沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

メキシコこわい

  • 映画「皆殺しのバラッド  メキシコ麻薬戦争の光と闇」をみてきた。シアターイメージフォーラムB級臭漂うタイトルだが、実際はシリアスな内容のドキュメンタリー映画。
  • 偶然にも2日連続でメキシコを舞台にした映画を観たことになる。こんなにかけ離れた二作もないけど…。しんちゃん一家も事前にこの映画を観ていたら、メキシコへの引越しは考え直したことだろう。
  • 映画の内容をざっくり言うと(まあタイトル通りなのだが)、メキシコはここ10年くらい麻薬ギャングの戦場になっていて、人が12万人くらい死んでいる。そんなヤバイメキシコの中でも最もヤバイ町、フアレスの麻薬事情に迫ったドキュメンタリー。
  • 去年、インドネシアの大虐殺事件のリアル殺人者に密着した「アクト•オブ•キリング」という凄いドキュメンタリーがあったが、本作もガチな殺人犯が出てくる点では同様。死体もナチュラルに写されるので、ある意味もっとキツイかも。
  • 本作がユニークなのは、メキシコのポップカルチャーにいかにギャングや暴力への憧れが浸透しているかを暴いている点。
  • 「アクト•オブ•キリング」で最もゾッとさせられたシーンで、国営テレビのバラエティ番組のなかで虐殺犯が当時の殺人を自慢気に語り、それを司会者もオーディエンスも喜んで聴いている、という場面があった。
  • 「皆殺しのバラッド」では、あの種の怖さがさらに掘り下げられている。メキシコには、ナルコ•コリードというジャンルの歌手がいて、麻薬ギャングの格好良さを歌うのである。
  • で、そういう歌がメキシコでメガヒットしているそうだ。なら格好いいのかというと、はっきり言って、信じられないくらいダサい。
  • だって「俺のバックには◯◯(有名なギャング)がついてる   だから俺もエラくてコワイ」みたいな歌詞なんですよ。じ…人脈を誇るのかよ…。(「悪そうな奴は大体友だち」の凄い版というか、さらにダサくした感じというか。)
  • 歌い手自体は別にギャングではなくて、ギャングをたたえる歌を歌うことで彼らから金をもらうという構図ができているらしい。とにかく、ミュージシャンとギャングがべったりで、ナルコ•コリードは大人気だということだ。
  • ライブも大盛り上がりなのだが、倫理的にどうこう以前に、やっぱりどう考えても音楽が本当にダサい。そのわりに歌は暴力礼賛的(「おれは殺しが大好きだ!」みたいなの)で、そういうのにごく普通の良識的そうな人々がキャッキャしてるのを見るとくらくらする怖さがある。
  • 警察もギャングの前にほぼ無力の様で、殺人事件の99%は捜査すらされない(!)し、有能な警察官は辞職に追い込まれたり殺されたりする。それもとんでもなく恐ろしいけど、ポップ音楽とか、「文化」を抑えられているのもすごく怖いよなあと。
  • ダサい上に暴力的な文化が覇権を握るとか悪夢でしかないが、へたすりゃ日本だって他人事ではないよな〜とも思ったり。あらゆる文化に毒はあるけど、どんな毒にやられるかくらいは選びたいもんですな。もっと書きたいが、色んな意味でくたびれたのでいったんここまで。