沼の見える街

ぬまがさのブログです。おもに映画の感想やイラストを描いたりしています。

響け!ショージョファイト

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  • なんか似合うので久美子ちゃんに言わせてみたが、今日の本題は元ネタのほう。あとでユーフォの話も、できれば少し。
  • さて、妙に広まっているこの言葉だが、元が日本橋ヨヲコの傑作漫画『少女ファイト』のセリフだということ、意外と知られていない気もする。バレーボールに命を燃やす少女たちが繰り広げる、熱く、厳しく、しかし優しい物語。もちろん百合もある。最新刊(12巻)が出ていたので、今日読んだ。
  • も〜日本橋ヨヲコ…大好き。今やすっかり有名漫画家だし、今さら好きなんて叫んだら笑われるだろうか…「いや、かまやしない」。超大好き!!もし漫画家を一人だけ選べと言われたら、それは荒木飛呂彦だけども、二人と言われたら日本橋ヨヲコの名を挙げざるをえない。ちなみに三人なら『ドロヘドロ』の林田球でしょうか。手塚治虫?知らない人ですね…。
  • で、この「お前がそう思うんなら…」というセリフを『ひだまりスケッチ』の主役の子が、死んだ目をしながら口にする絵がなぜか有名なんですよね(本当になぜなんだ…)。ノリのいい日本橋先生がそれを知って、その子をイケメン風に描き直してセルフパロディしてたりとか、微笑ましいかぎり。(『まどマギ』と日本橋ヨヲコという、かけ離れてる二者同士が遠回りにつながったみたいで、ちょっと嬉しくもある。まあ、まどマギも少女がファイトする話だしな…。)
  • ただこのセリフ、いまや巷ではすっかり「お前は何を言っているんだ」的な「煽り」文句として定着しているようですね。でも実はコレ、単なる煽り文句じゃなくて、『少女ファイト』という作品のテーマにかかわる重要な言葉なんですよ。
  • この物語の主人公は、凄腕バレーボール少女・大石練(ねり)。バレーの天才だった姉を事故で亡くした練は、狂ったようにバレーに打ち込むことで凄まじく強い選手になる(ついたあだ名は「狂犬」)。だがそんな練に周囲はついていけず、ある時チームメイト全員に裏切られてしまう。それ以来、練は人と深く関わることも、バレーで本気を出すことも怖くなってしまうのだった…というところから物語が始まる。
  • だが、どこか姉の面影を残すバレー素人・学(まなぶ)との出会いをきっかけに、練は少しずつ立ち直っていく。それでも依然として他人の感情に敏感すぎるあまり、傷つくことを恐れる練に、3巻で学がある言葉をかける。
  • 「どうにもならない他人の気持ちはあきらめて どうにかなる自分の気持ちだけ変えませんか 少しずつでいいんで」というセリフだ。
  • この言葉は、『少女ファイト』という作品の根幹をなす「思想」なのだと思う。というのもこれと同様の考え方が、まるで音楽のバリエーションのように、異なる状況で、異なる人物の口から発されることになるからだ。練は仲間やライバルとの関係性の中で、だんだんこの「思想」を修得していく。たとえば、「嫌なことがあったからといって、嫌な気持ちになる必要はないんだ」というように、「自分の気持ちだけ変える」すべを、徐々に発見していくのである。
  • で、「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」という例のセリフなのですが、軽く説明すると、言ったのは滋(しげる)という練の幼馴染。練がある人物に対して、「姉が死んだのはコイツの責任なのではないか?そうに違いない、コイツのせいだ」という思い込みを抱き、心を蝕まれていく。そんな練に対して、厳しくも言い放った言葉なのです。
  • そしてこのセリフも、先述した「思想」の変奏なのだと思う。(まるでソウルジェムを濁らせるかのように)自他への呪いをつのらせている人間が救われるためには、その狭苦しい「お前ん中」という檻から抜け出すしかない。滋はそれを伝えたくて、この言葉を練にかけたのだろう。
  • それと同じで、練が(というより私たちが)ずっと苦しんでる「どうにもならない他人の気持ち」も、結局は「お前ん中」の思い込み、幻想かもしれない。その檻を打ち破るにはどうすればいいのか?その先にはどんな景色が広がっているのか?それが『少女ファイト』の、最大のテーマなのだと私は思う。
  • 1巻で、姉の墓の前で「死にたい」と泣き叫ぶ練に対し、ある人物がこんなことをいう。「雑だな 生き方が雑だと言ったんだ そのままではいつか自分に殺されるぞ」「生きている意味が全て噛み合うその瞬間を味わいたいのなら ていねいに生きろ この華のようにな」
  • 物語の最初に言葉で示されたこの景色こそが、本作の目的地なのだろう。そろそろ完結する気配を漂わせはじめている『少女ファイト』だが、「全て噛み合うその瞬間」が練に訪れる時が、本当に楽しみ。
  • うう、語り足りないが長くなってしまった。ていうかユーフォの話してない。すまぬ久美子…。一言だけいうと、『けいおん!』に日本橋イズムをぶちこむと『響け!ユーフォニアム』ができるんじゃねーかな、と雑な妄想をしておりました。『けいおん!』見たことないくせにね。本当に雑だな…。生き方が雑だ。日本橋先生に怒られちゃうよ…。「いや、かまやしない」(かまうっつーの)。
  • ていねいに生きよう、華のように…。