沼の見える街

ぬまがさのブログです。おもに映画の感想やイラストを描いたりしています。

『イタリアは呼んでいる』を語るナイトライジング

  • 映画『イタリアは呼んでいる』を観た。文化村ルシネマ、1100円。しかし私は1000円とかでばっかり映画をみてるな。高校生か。
  • さてこの映画、タイトルから漂うのは「恋や仕事に行き詰まってる私がイタリアで新しい《自分》見つけちゃいました。スイーツ」的な匂いかもしれないけど、実態は全然違います。
  • 正しくは、「50代に差し掛からんとする俺たちがイタリアに行って美味いもん食いながら映画ネタでキャッキャしちゃいました。スイーツ」的な話でした。うん…。なんだこの映画。いや、面白かったんですけど。実際出るしな、スイーツも…。
  • まあ、とにかく変わった映画でしたよ。イギリスのおじさん二人組(俳優と芸人)が、雑誌の取材という名目で、イタリアを北から南へ食べ歩きするというそれだけのお話。スゴイのはその間、ずーっと映画ネタでしゃべり倒していること。その内容がなかなか濃いというか、やばいというか。
  • いや、映画ネタがいっぱい出てくるというのは事前に知ってたけど、しょっぱなから良い意味で予想を裏切られましたよ。だってイタリアで映画の話をするっていったら、そりゃ『ローマの休日』とか『甘い生活』とか、なんかクラシックなイタリア映画の話で、おしゃれな具合に盛り上がるのかな、って思うでしょ…。
  • なのにまさかの『ダークナイトライジング』ですよ。どうしてなんだよ。なんでイギリス人がイタリア旅行に行って高級レストランで『ダークナイトライジング』の話してるんだよ。おかしいだろ!…いや、めちゃくちゃ笑ったけども!
  • そんで二人の『ダークナイトライジング』のいじりっぷりがまた(いい意味で)ひどくって。超おいしそうな料理を味わってる最中になぜか一人が、執事のアルフレッドを演じたマイケル・ケインの物真似を突然はじめる。それをきっかけに、バットマンクリスチャン・ベール)と悪役べイン(トム・ハーディ)の物真似合戦がスタートする。主役と悪役のセリフがどっちも聞き取りにくいことをネタにして、心底しょうもないやりとりを延々と続けるんですね。
  • たとえば、助監督が撮影中バットマンとベインのところにやって来て「あの〜すみません、ノーラン監督が、あなたたちのセリフは聞き取りづらいって…」って言ったら、二人に「もごもご」「もごもごもご」って怒られたので逃げ出す、みたいなネタを小芝居でやるんですよ。本当にしょうもねえ…。
  • いや、こんなしょうもないネタなのにしっかり笑わせてくるんだから、さすがプロとしか言いようがないですな。二人の話術をひたすら楽しむ映画と考えて良いでしょう。
  • ま、後半になればちゃんと(?)イタリア映画の話も増えてくるんですが(『ゴッドファーザー』とか)。あ、雑談の中でネタにする映画も物真似する役者も、もちろんすべて実在します。怒られるだろ…。ていうか主人公二人も実在する人気俳優&芸人で、自分自身を実名で演じているんですよね。この虚実入り混じった構造、なかなか面白い。一種の現代ショービジネス批評にもなっていて、独特のサスペンスを生んでいます。
  • 日本で例えると…。たとえば、香川照之大泉洋が、「テルユキ」と「ヨウ」という名前で主役の二人組を演じて、現代日本の実在する映画や役者をコケにしまくる雑談を繰り広げる映画、みたいなイメージですかね。大泉洋が急に『ルパン三世』の小栗旬の物真似を始める、とか。ちがうかな…。まあとにかく、『イタリアは呼んでいる』にはそういう感じの面白さと緊張感があるわけです。映画に詳しければ詳しいほど、楽しめるはず。
  • ただ、本作で二人がネタにする対象、まだ映画ならついていけるんですが、音楽やテレビになるともう日本の観客はお手上げという感じですね。アヴリル・ラヴィーンくらいはわかりましたけど。カーステレオから流れる「♪わたしって嫌な女かしら♪」っていう歌詞に対して、二人とも「うん」って答えるシーン笑った。
  • まあ全編こんな感じですね。美味しい食事、友達との楽しくてくだらない会話、きれいな風景、ちょっとしたロマンス、それさえありゃあオールオッケー!っていう楽しい映画です。ただ、そんなお気楽道中の中、ふとした瞬間に二人が見せる「哀しさ」がけっこう胸に迫るんですよね。物真似やパロディの中にふと混じる「本音」に、ドキッとさせられたりとか。それも楽しい旅のスパイスって感じで、うまい按配だなと感じました。皮肉とユーモアと詩情に満ちた、奇妙で素敵なロードムービーでしたよ。
  • 長くなったのでこのへんで。しかし映画ネタばかりになってきたな…。まどマギの話とかも久々にしたいんですけどね。映画見ちゃうとついそのことを書いちゃうんだよな…。うーん。まあ、好きにやるか…。