沼の見える街

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『トゥモローランド』観た!

  • ブラッド・バード監督の映画『トゥモローランド』観た。TOHOシネマズ新宿、400円。
  • 400円て何料金だよ幼児か、と思われるかもしれないが幼児ではなく、6ポイント鑑賞を使用した。6回みるとタダになるやつ。でも今回はIMAXで観たので、追加料金で400円とられたのでした。なんだよ〜いっそタダにしてよ〜(わるい客)。
  • それにしてもIMAXイコール3Dではない、という事実を私はしばしば忘れる…。今回も思いっきり3Dを期待していたので、入場時に「あれ、メガネ渡す人は…?」と一瞬うろたえてしまった。いかにも3D映画っぽい雰囲気だけど、2Dオンリーの実写作品です。
  • さて『トゥモローランド』ですが…いや〜、おもしろかったです。400円で観るのは明らかに申し訳ない(そりゃね)良作でしたよ。というか、これ昨日公開だったのね…。どうりで激混み。
  • 『シンデレラ』をみて「トホホ…もうディズニーの実写はこりごりだよ」とか言ってたくせに(言ってねーよ)、なぜまた懲りずに観たかというと、やはり監督ですね。ブラッド・バード監督。『アイアン・ジャイアント』『レミーのおいしいレストラン』『Mr.インクレディブル』と、一捻りも二捻りもある秀逸なエンタメ作品を連発している凄いお方。やはり見逃すわけにはいきません。
  • 上記のうち下二つはピクサー作品だし、ご覧になった方も多いと思いますが、『アイアン・ジャイアント』はこの場を借りてゲキ推ししたい映画です。謎の鉄巨人と少年との交流という、一見するとぶっちゃけ凡庸っぽく思える作品ですが、その実態は隅々まで作り込まれた傑作長編アニメ。1999年公開にもかかわらず、今見ても古さを感じさせません。ダイナミックに生き生きと動く絵、落ち着いた色彩ながらもハッとするような美術、何より練りに練られた面白いストーリー。いまだに「海外アニメベスト10」とかに名前があがるのもうなずける、凄い作品です。私もバード監督作では一番好きですね。
  • ただバード監督、『アイアン・ジャイアント』のような王道娯楽作品は実は珍しい。『レミー』ではドブネズミにフランス料理店のシェフをやらせたり、『インクレ』ではメタボのヒーローを主役にしたり…。子供向けという枠の中で、相当尖ったことをやっている、一般的にもそういうイメージの監督だと思います。
  • そんなわけで、『トゥモローランド』。当初は正直、「えっ…ディズニーのアトラクションどころかエリアそのものの映画化って、面白いのか?それは…」とか思ってましたが、監督がブラッド・バードと聞いて興味が湧きました。あの奇天烈な(失礼)バード監督が単なるディズニーの宣伝映画を作るはずもないですし。ふたを開けてみたら、いやー…やっぱり流石。構成一つ取ってみても、かなり尖ったことをやっている。
  • まず、いきなりジョージ・クルーニーのどアップから始まる。なにやら記録映像を作っている模様。そこから過去にドンと飛び、彼が少年時代に迷い込んだ「トゥモローランド」というファンタジックな世界がバーーーッと提示される。で、そのまま話が続くと思いきや、なんと一回バシッとその少年の話は切られるんですよね。そして、一緒に記録映像を作っていた女の子が次の語り部になって、いきなり主人公が交代するんですよ。序盤も序盤で。大胆なことするよなあ…!
  • 面白いのが、主人公が「交代」する前と後で、話のトーンがまったく違うこと。ジョージ・クルーニー演じるフランクの「過去」である少年の物語は、時代的にもニューヨーク万博があった年だし、まぁ昔ながらの冒険譚っぽい雰囲気なんですよね。
  • 賢いけど孤独な少年が、未知の世界に迷い込んじゃって、空飛んだり落っこちたりする派手なシーンもあり。まあ、それはそれでワクワクするんですが、正直「あ〜今回はこういうノリなのか…ちょっと拍子抜けかな…」とか思っちゃったんです。が。
  • そう思ったあたりでこの「第一部」が速攻終了して、(一見)全然違う話が始まるんだもんな。やられた。意表を突かれましたよ。フランクのどアップから始まった上、この少年がまたいかにもアクティブで利発そうに主役然としてるもんだから、この子が今回の主人公だって普通に信じちゃいましたね。
  • で、その次に始まる「第二部=本編」は、スマホとかもある「現在」が舞台です。ストーリーテリングの技法もガラッと変わって、カット割りといい台詞回しといい構図といい、グッと現代的になる。主役の女の子ケイシーが突然NASAの基地をジャミング&不法侵入する場面から始まる。そこから展開する物語もスリリングかつ物騒なもので、「第一部」のノスタルジックな冒険譚とはずいぶん違います。だけど、めっぽう面白い。この「第一部」と「第二部」の対比が、テーマ的にも非常に重要なものなんだろうと感じました。
  • というのもこの『トゥモローランド』、フランクとケイシーという二人の主人公が「未来」「現在」「過去」にむける眼差しの対照性が、とても大きな意味をもっている作品なので。
  • まずフランクは「過去」に縛られている。第一部で観客が味わったような、美しく調和のとれた「過去」が呪いとなり、「未来」を諦めながら「現在」を生きる男、フランク。
  • そしてケイシーは、「未来」を決して諦めない。第二部のように、雑然としていてちっとも完璧ではない、だけどスリリングな「現在」を生きながら、どんな時でもより素晴らしい「未来」に向かおうとする少女、ケイシー。
  • この二人がどのように出会い、どのように変わっていくのか?という点が本作の軸となっています。この二人を結ぶ存在、謎の冷血武闘派ロリ美少女「アテナ」も実に面白いキャラクターです。頼れるのか信用できないのか実にグレーな性格が魅力的。ある場面で叩かれて怒るところとかメッチャ可愛い。思う存分大暴れするアクションな見せ場も必見です。
  • ていうかこの映画、ディズニーとしては過去屈指の残虐描写ありまくりな作品ではないだろうか…。人間じゃない相手には何してもいいと思ってませんか、ブラッド・バード監督…。観客わりと引いてましたよ。大好きです。
  • うわー長い。またいずれ、絵と一緒に。最近さすがに長すぎて、我ながらどうかと思う。「やりすぎるな」と常に自分に言い聞かせてはいるのですが。たまには一行とかで終わりにしようかな、「よかったです」とかで。こんな長文を毎日読んでくださってる方、(もしいたら)ありがとうございます…。ではでは。