沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

映画『ピクニック』みた。

  • ジャン・ルノワール監督の映画『ピクニック』をみました(みたのは一昨日ですが)。シアター・イメージフォーラム、1000円。渋谷の小さな映画館で先週から公開されていて、一部ではわりと話題になっているのですが、これがたいへん古い映画なのです。撮影されたのは1936年。めっちゃ昔ですね。もちろん白黒映画で、上映時間も40分と短いです。
  • 「40分で1000円とか高くね」って感じかもですが、まあ最近は30分位で千何百円も取るアニメ映画も多いそうですし…。いや冗談はともかく『ピクニック』、後述しますが映画史的にとても重要な一作ということもあり、このたびデジタル・リマスターで新たに蘇ったのがけっこうな事件というわけなのです。
  • で、一応映画ファンを名乗る者としていそいそと見にいったわけですが、さすが古典的な名作というべきか、短くも美しい映画でした。若干「お勉強」みたいなノリで見たのですが、テンポが良くてキュートでシニカルで、でもどこか悲しくて、私のように大して映画史とか詳しくない者でも「普通に」楽しめる作品だったと思います。
  • ていうか、こういう機会じゃないとあんまりちゃんと観ないんですよね、昔の映画なんて…。Huluに『ピクニック』が入ってても多分見ないでしょうし。見たとしても途中で集中が切れて「グレンラガン」とかを見始めていたことでしょう。あ、今日久々に1話を見たんですよ。兄貴かっこいい。ヨーコもかわいい。
  • 『ピクニック』に話を戻しますが、まず監督はジャン・ルノワールという人です。印象派の有名な画家ルノワールの息子さんですね。まあこの人も大変エライ監督なんですけど、『ピクニック』は助監督がすごいんですよね。ルキーノ・ヴィスコンティ、アンリ=カルティエ・ブレッソンジャック・ベッケル…。
  • 無駄に豪華すぎるだろ…。というかこんな濃すぎる助監督、一周回って邪魔なのでは…。どう考えても持て余すだろ…。まあ、後で全員巨匠になるとはいえ、当時はみんなまだ若手ですけどね。それにしたってすごいですが。
  • この豪華さを漫画でたとえると、手塚治虫の短編のアシスタントが石ノ森章太郎赤塚不二夫つげ義春、みたいな感じですかね。ちがうかな…。まあでもノリ的にはそういうことでしょう。手塚治虫が一声かけたらトキワ荘のすごい人がゴジャーッと集まっちゃって、なんか知らんがやたら豪華になっちゃったぜ…っていう。
  • そしてこの映画、非常にジャンル横断的というか、当時のヨーロッパの映画・美術・文学・哲学・写真といった芸術界のプロ中のプロたちがなぜか一点に収束しちゃった、特異点みたいな作品なんですね。そのくせ戦争のせいで一度は破棄されるわ、結局公開は10年後になるわと、やたらと不遇な運命をたどっているという点も面白い。
  • ストーリーはシンプルで、ある家族が夏の日曜日にピクニックに行くよ!というだけのお話です。ブランコに乗ったり、釣りをしたり、舟に乗ったり、ナンパしたり(難破じゃないですよ)、平和で幸せな一日を生き生きと描く映画。でもその、「その時は当たり前に思えた幸せ」こそが本作のテーマなんですよね。
  • 終盤にはある悲しい展開が待っていて、あの時のキラキラした幸せは実は、本当に儚いものだったのだな…というビターな後味を残して映画は終わります。でもだからこそ残る美しさがある、というような。月並みな言い方ですが…。とりわけ今回リマスターで蘇った「音」の美しさが自然や人の描写をより豊かにし、そのテーマを強調していたと思います。
  • あ、途中ちょっと出てくる猫が無性にかわいかったです。あのムリヤリ映画に出させられてる感、たまらん…。「なんぞ?なんぞ?」みたいな…。かわいい…。ああいうのも古い映画の醍醐味かもですね…。
  • 大したことは何も言えませんでしたが、時間切れなのでこのへんで…。現代だけでも大変なのに、過去にも面白そうなものがたくさん埋まっていて、一生かけても掘り出し切れなさそうですね。ま、嬉しいことです。ではでは。