沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

実写版『進撃の巨人』感想(役者編)。

  • 実写版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』観ました。TOHOシネマズ新宿、1100円。
  • 結論から言うと、かなり楽しかったです。すでに批判の声も散々聞こえてきますし、原作ファンの怒りも理解できますが、『進撃の巨人』を実写化しようなどという「どう考えても完全に無理」な企画に対して、よくぞここまで…とねぎらいたい気持ちが個人的には上回りますね。もちろん物語上の隙や、実写化ならではのアラも多いですし、ダメなところを挙げようと思えば延々と挙げられますが、「駄作」とか「失敗作」とか断ずる気にはなりません。原作に忠実ではないけど、原作の精神性に対して「誠実」な作品だと思いますよ。
  • まあ、期待値がかなり低かったというのもあるかもしれませんが。ぶっちゃけ予告編を見たときは「絶対地雷だろ…スルーしよ」と思いました。ただ、共同脚本がまさかの町山さんだったりとか、「ほう」と思うところもいくつかあったし、やっぱり良くも悪くも好奇心を刺激されるので、「ひょっとしたら…」と思って見に行ってみたのでした。
  • もちろん大迫力の特撮とか容赦ない残酷描写とか、色々語りたいポイントはあるのですが、今日は役者陣について書こうと思います。皆さん、おおむね大健闘していたのではないでしょうか。
  • 特にイイな〜と思ったのは、アルミン役の本郷奏多さんですかね。有名な役者さんなのに実はよく知らなくて、最後に見たのは2005年『HINOKIO』の主役とかなんですが、今回大人になった彼を見て「あ、リアルミン(リアルなアルミンの意)…」とちゃんと思えました。すごいアルミンっぽかったです。「あいつも怖いんだよ」とかジャンに聞こえよがしに言っておきながら、凄まれるとしっかりビビる、みたいな「微妙に屈折したお人好し」っぷりをバッチリ体現していました。あそこよかったです…。
  • リアルミンとの絡みも多い、サシャ役の桜庭ななみさんもベリーグッドでした。ていうかめっちゃかわいいなサシャ。サシャのくせに…(いやサシャは原作でもかわいいけど)。芋女&癒しキャラっぷりもちゃんと健在でしたね。マッシュポテトむしゃむしゃ喰うところ、愚かしくてかわいい。まあ(原作ファンには周知の設定とはいえ)弓矢の腕前については前半に伏線があるべきだと思いましたけど。
  • 進撃の二次創作シーンはよく知りませんが、「アルミン×サシャ」ってわりとメジャーなカップリングなんですかね?今回いい感じにフラグが立ってましたが、原作にそういう描写ありましたっけ。アニメ2期のEDでアルミンがサシャを餌付けしてる姿が描かれてたし、あそこを拾ってるのかもな。でもいいですよね、この組み合わせ。「いつも(じゃがいも)くれるね」っていうセリフが特に愚かしくて好きです。なんだかんだ、今回の映画化でいちばん原作に忠実だったのってこの二人だと思うし、アルサシャ派(いるよね?)の人にはスゴイご褒美でしたね…。
  • エレン役の三浦春馬も、やっぱりカッコいいなーと思いましたよ。今回の映画はエレンが原作と違う、ヘタレだヘタレだって散々言われてますし、作り手さえもそう公言してましたけど、私は「そんなに違うか?」と感じました。たしかに設定はだいぶ変わったけど、原作エレンの懸命(命懸け?)で男前な主人公イズムはきちんと残ってたと思う。原作とは異なる運命を辿ったエレン、という感じにちゃんと見えましたし、それはやっぱり三浦春馬がすごく頑張ったからじゃないでしょうか。とんでもない重圧の中で、よく引き受けてこなしたと思いますよ、こんな無茶な役。
  • ハンジ役の石原さとみ、意外にも良かったんですが、やっぱりもうちょい年上の女優さんの方が変態性とのギャップが際立ってよかったのにな〜…とか書こうと思ったけど、石原さとみって私より年上なの…!?まじでか。じゃあいいです。年上大好き!(何言ってんだコイツ。)…何にせよ次の後編ではよりハンジの変態性が発揮されると思うので、さらなる活躍が期待されます。ぐりぐりしたりとか。やばいですね。
  • ミカサ役の水原希子さんという人、全然知りませんでしたが有名人なんですね。美人だし、別に演技も悪くなかったですけど、あんまり語ることはないかな…。序盤は「えっ、今回のミカサはこんなお荷物ヒロインっぽいキャラでいくの!?」とびっくりしたんですが、そんなことはなくてよかった…いや、よかった…のか…?ミカサのくだりは今回で最も凄まじい改変があった部分なので、正直まだなんとも言えないですね…。後編次第かなあ…。お腹をちらりと見せるシーンはえろかったんですが、そのあとに「世界は残酷だ」って言う原作の名言をつなげたいなら、あんな打ち身みたいな跡じゃなくて、もうちょいグロテスクで惨たらしい傷跡にしようぜ…と思いました。どうせ普段は見えないんだしさ〜…。まあ役者のせいではないですね。
  • あ、ジャン役の三浦貴大さんも良かったですよ。どっちかというと「ジャン的なキャラを好演」という感じで、そんなに原作のジャンっぽくはなかったけど、まあいいんじゃないでしょうか。ジャンだし。(ひどい)
  • という感じで、原作ネーム組は相当に良かったと思いますよ。訳知りっぽいおっさん・ソウダ役のピエール瀧や、色々かわいそうな子持ち女・ヒアナ役の水崎綾女さんを中心に、ノット原作組も大変がんばっていました。
  • ただ、あえて苦言を呈するなら、ですね…。原作の「リヴァイ」に相当する最強キャラ、「シキシマ」という人物が今回出てくるんですが、これを演じた長谷川博己さんの演技はちょっっ…とどうかな〜…と感じました。すいません、喋り方とか正直、気持ち悪かったです。謎めいた「強者感」を出そうとしてるのはわかるけど、なんか空回りしていて逆にダサかったような…。
  • いや、素晴らしい役者さんだとは思うし、俳優としての「格の高さ」的な意味でも「作中最強キャラ」にこの人を配置するのは全然アリだと思いますが、別人とはいえ一応リヴァイにあたるキャラなんでしょ…?もうちょっと硬派にカッコイイ感じにならなかったのかな〜…。この人が出るシーンは全体に妙にわざとらしくて、正直、見ているのがキツかったです。
  • まあ、リヴァイじゃないしな。後編は完全にオリジナル展開のようだし、このシキシマの(わりと最低な)人間性とかが、重要な鍵を握ってるのかも。しかし、いかんせん最低なので、シキシマが何であろうとどうなろうとあんまり興味が湧かないですね…。うーん。
  • ひとつ言えるのは、このキャラを「リヴァイ」と名付けなかったのは大正解だった、ということでしょうか。名前引き継いでたら今頃「リヴァイはそんなこと言わない!」の嵐だったことでしょう。まあだから、コンセプトが違うのか。でもそれにしたってあんまり魅力あるキャラじゃない気がしますが…。うーん。後編でひっくり返してくれるのを望みます。
  • 今日はマッドマックスとハシゴして疲れたのでこの辺で。とにかく本作の役者さん、心ないディスもこれから沢山受けることと思いますが、ひとまずはちゃんとそれぞれの心臓を捧げた、もとい立派に役割を果たしたと思いますよ。別に興味なかった私に、しっかり「次作も観よう」と思わせる程度には。次も期待してます(むろん長谷川氏にも…)。ではまた後日。