沼の見える街

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『日本のいちばん長い日』ふたたび

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  • (前回の記事はコチラ→『日本のいちばん長い日』みた。 - 沼の見える街
  • 終戦記念日は終わっちゃいましたが、なんとなく『日本のいちばん長い日』のお絵描きがしたくなったので、大急ぎで描いてみました。左から鈴木貫太郎山崎努)、昭和天皇本木雅弘)、阿南陸軍大臣(役所広司)。それにしても昭和天皇のイラストを描く日が来ようとは夢にも思わなかったぜ…。いや、中身はモックンだけども…。
  • 『駆込み女と駆出し男』のときも2枚もイラストを描いてしまいましたが、原田監督の映画って妙にお絵描きしたくなるんですよね。美術や衣装や照明が一流なのはもちろんのこと、俳優の顔面や肉体そのものも含めた絵作りがビシッと決まっていて、映画としてのルックが大変「かっこいい」からだと思う。まったく古臭くない。時代劇や歴史劇を現代に蘇らせるためのアプローチとして、大成功だったのではないでしょうか。
  • ただ、『駆込み女』とのマイナスの(?)共通点は、序盤がスゲーわかりづらいってことですかね…。言葉遣いも難しいし固有名詞や専門用語がポンポコ出てくるし、最初は「誰が何?」って感じになるかもしれません。でも、仮に「よくわからんぞい」と感じても気にせず見続けていれば、物語が進むにつれて各々のキャラが立ってきて、人物の立ち位置や関係性などもだんだんわかってくると思います。とりあえずイラストの三人が実質的なトリプル主人公なので、この顔が画面に出たら注目しとけばいいかと。
  • もっといいのは、早めに劇場に行ってパンフレットを買って、始まるまでに大まかなあらすじを読んじゃうことかも。前にも書きましたがこのパンフ、資料としても読み物としてもめちゃくちゃ充実してるので、間違いなく買って損はないです。下手な雑誌とかより情報量多いくらいだし、820円は安い。『マッドマックス』のパンフも神パンフでしたが、わりとアレに匹敵するような。
  • パンフの中で音楽評論家の鈴木道子さん(鈴木総理の孫)が「劇中曲解説」っていうのをしてまして、これも味わい深く、勉強になりました。本作オリジナルの名場面として、陸軍大臣・阿南が「軍艦マーチ」の流れるラジオを消すと、どこからか英語の歌が聴こえてきて、しばし聴き入ってしまう阿南…という美しいシーンがあるんですね。解説によると、この曲はイギリスのポピュラー歌手ヴェラ・リンの歌う「ウィ・ウィル・ミート・アゲイン(また会いましょう)」という歌だそうです。「戦争が終われば、いつかまた大切な人たちに会える」という歌詞で、兵士たちを慰めるような内容になっている。軍人として「敗戦」という流れに屈しきれずにもがく阿南が、「終戦」を象徴するような音楽につい聞き惚れてしまうという皮肉。そして「戦争が終わった」結果、阿南の人生がどういう顛末を迎えたかを考え合わせると、美しく穏やかな一方で、とてもビターな場面でもあります。ここだけ明らかにトーンが違っていて、ちょっと忘れられないような深い余韻を残すシーンになっていました。
  • 主役3人のことだけでなく、脇を固める松坂桃李堤真一とかについてももっと語りたいのですが、お絵描きもして今日はくたびれたのでこの辺で…。評価も高いですしまだしばらく公開は続くでしょうから、またいずれ折に触れてなんか書きたいと思います。今年の邦画の中でもトップクラスに重要な作品になると思うので、未見の方もあまり構えず一度ご覧になってみてはいかがでしょう。塚本晋也監督の『野火』なんかと比べるのも面白いかも。それではまた。ウィ・ウィル・ミート・アゲイン。つって。