沼の見える街

ぬまがさのブログです。おもに映画の感想やイラストを描いたりしています。

批評的とは。ジャンプ感想(41号)

  • 新連載の将棋マンガ『ものの歩』。先週の予告で「池沢春人先生の最新作!」という文字を見たときに「えっマジで!?でも今のジャンプであの狂ったノリが通用するのか…?ていうか他誌の『ロクロックビ』とかいうイカれた連載はもう打ち切られたの!?」といった想いが一瞬脳内を駆け巡ったが、梅澤春人先生と勘違いしていた。いや、梅澤先生の将棋マンガとかメチャクチャ読みたいけども…。誰一人として駒の動かし方を知らず、すべてを暴力で解決する将棋マンガ。「ガッデム!これが俺の棒銀戦法だーーー!」とか叫びながら刃物を構えて突進するモヒカンザコ。デストローイ!!
  • 今週の池沢先生は剣道マンガ『クロガネ』の人でしたね。未読なので何とも言えないけど、前作はあんまり良い評判を聞かないかな…。作者がジャンプの他の漫画をTwitterとかでディスって炎上しちゃったこともあり、わりかしアンチも多い作家さんのようですね。ただ個人的に、漫画家が他作品をディスること自体は別に悪くないと思う。
  • プロの作り手による「他作品の批評」って、私はもっと聞いてみたいんですよね。別にディスらなくていいけど、フランクなノリで「ここは面白い、ここはイマイチ」みたいな感じで喋ってくれたら、けっこう有意義だと思うんですが。でもやっぱり炎上リスクが大きいからか、あんまり見かけませんね…。
  • さて『ものの歩』本編だけど、正直あんまり面白くはなかった。題材が地味なこと自体は全然いいんだけど(囲碁とか相撲とか成功例も多いし)、その地味さを逆手にとるわけでもなく、主人公もお話もただひたすら地味で、かといってリアリティがあるわけでもなく、どこを面白がればいいのかよくわからない。
  • 主人公の特性の「要領の悪さ」が実は「集中力の高さ」の裏返しっていうのも、何の捻りも意外性もないしな…。『ハチワンダイバー』の主人公・菅田も似たような地味な能力だったけど、あっちはケレン味たっぷりの突き抜けた描写と、周囲のアクの強いキャラたちのおかげで、地味な菅田が逆に主役として際立つ(そして地味な将棋が主題として際立つ)作りになっていた。鬼才・柴田ヨクサルと比べるのはあんまりだけど、それにしてもこの地味さは…実際かなり厳しいのではないか。
  • けっこう不思議なんだけど、池沢先生、公の場で同業者をディスったり、ビッグマウスを叩いたりと、批判精神に溢れた尖った性格なんだろうに、漫画にはその「尖った性格」が全然反映されてないんだよな。読者の裏をかいてやろうとか、目にもの見せてやろう、とかそういうのがなくて、ひたすら普通で地味というか…。もっと自分の性格の悪さをガンガン押し出して、ギョッとするような作品を描くとか、そういう方向にいかないもんだろうか。(それこそ池沢先生がディスっていた『めだかボックス』みたいに。面白いかは別として、とにかく批評性にだけは満ち溢れていた漫画だった…。)
  • 私見ではこの『ものの歩』、多分そう長くはもたないと思うんだけど、もし打ち切られたら池沢先生、ジャンプ漫画の批評を本格的に始めてくれないだろうか。すでに1回炎上してるから失うものは特にない(?)だろうし、まがりなりにもジャンプで2回の連載経験をもつようなプロの人が、同誌の他作品をどうジャッジするのかというのはとても興味深い。
  • 過去の発言で、池沢先生は「新人漫画家はみんな当たり障りのない発言しかないけど、自分みたいに好きなことを言って嫌われる奴がいたっていい」的なことを言っていた。その心意気はとても良いと思う。でも、その「嫌われる」覚悟や批判的精神が、どうも漫画の中では活かされてないような気がするんだよな…。
  • だから打ち切りにあった際には、そのせっかくの「性格の悪さ=批判精神」を、批評というフィールドで活かすのも面白いんじゃないかな〜って思うんですよね。嫌われ役を買って出て、批評の中でも特に有意義だと思われる「同業者批評」の先陣を切ってくれたらいいなって。いや、「打ち切られる」前提なのが本当に失礼な話だけど…。う〜ん…。まずは様子見か。
  • 長すぎるので『暗殺教室』にいこう。序盤のメタなギャグ、面白いですね(生徒の自主性とはいったい…)! でも中学→高校って、高校→大学と違ってそんなに「進路の選択」では悩まなくね?という気はする。偏差値とか場所とか公私の選択はあるだろうけど、進路の種類は高校で全然変えられるしなぁ。こういう「中3にもなれば進路とか決まってて当然でしょ」みたいな、本作に漂う「健全」な感じはちょっと押し付けがましくて苦手。これからE組の君らもやりたい事とか変わってくと思うよ、なんつってもまだ中学生なんだから…。渚くんも、「先生になりたい」というのは面白いアンサーだけど、別に2月末までに結論出さなくていいと思うよ…。全然なれるよ、後からでも…。
  • 食戟のソーマ』。展開としてはダイナミックで面白いけど、現時点でえりなパパにボスキャラとしての魅力が全然ないため、「えりなパパについていくために十傑がいっぱい寝返ってしまった!大変だ!」と言われても、「ハァそうですか…十傑チョロっ」としか思えない。特に司先輩、あんたにはガッカリだよ…。
  • 今の所、えりなパパが、最強のラスボスというよりは、「厨二病をこじらせて世迷言を口走っている失礼で幼稚な勘違い野郎」にしか見えないんだよな…。それくらい先週の「美食=芸術」理論にはさっぱり納得がいかなかった。そんなに大衆に喰わせるのが嫌なら、娘の文化祭にしゃしゃり出てきてイチャモンつけてないで、おうちで好きなゴハン作って食べてれば? 料理がとっても上手な人たちだけで集まって、かわりばんこに作って誉め合ってればいいじゃん。ソーマと対置するための極端な思想なのはわかるけど、それにしてもしょうもない。えりなパパも彼についていく十傑もみんなダサいです。次回以降フォローが入るのを祈ります。
  • 『僕のヒーローアカデミア』。表紙のアシドちゃん良いなあ。でも紫っぽいピンクなのか…。爆豪くんがセロくんたちにめっちゃイジられてるのも微笑ましい。今のかっちゃんにいちばん必要な友人だよ君たちは…。かまってあげてね。セロくんといえば今回の実習で1位をとっていたのが妙に嬉しかった。ひたすら地味、そして優秀。いいキャラだ…。
  • 『火ノ丸相撲』。ついに始まった潮VS沙田。今週も面白い…!特に何と言っても沙田の、「ライバルなんていらない」っていう台詞の強烈さ。この漫画、お話は王道中の王道なのに、常に「少年漫画のお約束」を打ち破ろうとしていますね。「ライバルと研鑽する」ことで強くなるという少年漫画的なお約束を、まずは周囲の大人のモノローグで美化する(負けたとしても、それはそれでいいんだ…というような「大人」な視点でもある)。
  • でもやってる本人としては「ふざけんな」と。「俺と同じくらいの力の奴がいるってことは、負けるかもしれないってことだろうが!俺はもう、負けたらお終いなくらい、全てを賭けちまってるんだよ!ライバルとの研鑽なんていらない、俺はただ、一番になりたいんだ」という、沙田の執念が圧倒的な筆力で描かれている。
  • 少年漫画的な価値観を一回叩き壊して、安全圏にいる者(観客/読者/大人)にはわからない、もっと切実で生々しい「勝ち」への欲求をあぶり出す。そしてこれは、最初に2人が戦ったときに、「勝負が楽しくてつい微笑んでしまう」沙田を、「何を笑っていやがる…!?」という、アンチ少年漫画的な執念で潮が打ち破った構図の、まさしく意趣返しなんですよね。『ものの歩』の池沢先生への当てつけじゃないけど、こういう作品こそ「批評的」と呼ぶにふさわしい漫画だと思う。
  • ワールドトリガー』。ああ、負けたか…。でもまさかの修死亡から始まって、最後までずっと面白くて、この4つ巴バトルで葦原先生の真骨頂を見せつけられた気持ち。これだけの激戦の最後が時間切れってのもなんかしみじみしてて良い(そして二宮さんは何を雪だるま作ってんの!?)。
  • しかしヒュースくんがたいやきムシャムシャ食べてるのって「迅の思うままに動くのも癪だから、これが賭けの報酬でいい」ってことかな…?と思ったけど、そういや陽太郎がおやつ賭けてたのか。子供からもキッチリぶん取るヒュースくん…かわええ。そしてラストはびっくり。迅のぶんは修が抜けるってことかな…?気になる。
  • 『背すじをピン!と』。わたりちゃんトラウマ回だけど、土屋君がいい仕事をしているなあ…。わたりの過去にあった辛い出来事を聞いて、励ましたり慰めたりするのではなく、「それでも前向きに頑張ってるから、尊敬する」って返せる土屋君マジ紳士…。だからこそラストのわたりの再びの挫折がズシンと響くんだけども。基本イヤな人が出ないストレスフリーな作品なだけに、ちょっとした悪意ない一言に心をえぐられるっていう、この絶妙なバランス。スマートな漫画だ…。
  • 書きすぎたのでこのへんで…。今ジャンプで特に面白い作品を3つ選ぶと『火ノ丸相撲』『ワルトリ』『ヒロアカ』になると思うけど、やっぱりどれも物凄く批評的な漫画ですよね。もちろんその上で面白いっていうのが凄いんだけど。学びたいものです。では。