読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

沼の見える街

ぬまがさのブログです。おもに映画の感想やイラストを描いたりしています。

『マジック・マイク XXL』感想

映画
  • 映画『マジック・マイク XXL』観ました。ヒューマントラストシネマ渋谷、1000円。
  • 結論から言えば、素晴らしく面白かった。後半期ではベストかもしれない。「男性ストリッパー」というふだん全く馴染みのない世界の人たちを、コミカルかつ優しい視点でスタイリッシュに描いた快作です。当然っちゃ当然ながら、宣伝ではかなり女性客を意識しているみたいなんだけど、男性が見ても全然楽しめるはず。すっごい面白かったし、かっこよかったです。全く知らない世界に生きる人々から元気をもらえる、これぞ映画を見る喜び!と素直に思いました。
  • 本作は2012年の『マジック・マイク』の続編ですが、別に前作を知らなくても大丈夫だと思う(私も見てないし)。主演は前回から引き続き、チャニング・テイタム。マッチョなイケメン俳優の代名詞的な存在だけど、名作コメディ『21ジャンプストリート』でも良い味出してたし、最近だとシリアスな『フォックスキャッチャー』での演技も素晴らしかった。一部の口の悪い層からは「バカの顔をしている」などと言われているようですが(そんな言い方ってある!?)、非常に柔軟な知性をもった素晴らしい俳優さんだと思います。これからのさらなる活躍に注目せざるをえませんね。
  • ざっくりあらすじ。かつて凄腕の男性ストリッパーだったマイクは、引退して家具職人として暮らしていたが、イマイチ仕事が軌道に乗らず、恋人とも別れてしまい、冴えない生活を送っていた。そんなある日、昔の知人の訃報が届いたので急いで駆けつけるも、そこでは元ストリッパー仲間たちが呑気にパーティーを開いていた。訃報は嘘で、マイクを呼び出すための口実だったのだ。呆れるマイクだが、「最後に一花咲かそうぜ!」という仲間たちの誘いに乗り、大規模なストリップ・ダンス・コンテストへの出場を決意する…!という感じのお話です。
  • そもそも「男のストリップってなんだよ」と感じる人も多いかもですが、アメリカではすでにかなり市民権を得ている文化のようです。いわゆる「風俗」という感じではなく、もっとエンタメ寄りの「ショー」として位置づけられている。考え抜かれた演出とキレッキレの動作によって、屈強な肉体をいかに美しく「魅せる」か、そして女性客にいかに喜んでもらうかという点を重視したショービジネスですね。意外にも(って言い方はよくないですが)、下品な感じはほとんどしません。素直にかっこいい。
  • そんなストリップショーにおいて核となる要素が「肉体美」と「ダンス」なわけですが、本作ではとにかくこの二つをひたすら愉しむことができます。まず序盤、マイクが家具工房で仕事をしているんですが、音楽が流れ出すと踊らずにはいられなくなる、このシーンからして本当に素晴らしい! 単なるBGMとして流していた音楽に、頭よりも先に体が反応してしまい、どうしてもビートを刻んでしまう…。そこから雪崩を打つように始まる、屈強な肉体美を誇るチャニング・テイタムのダンス! キレのある動きを存分に堪能できます。
  • 「日常空間で突然ダンスが始まる」という点で、いわゆる王道のミュージカル・シーンにもなっているわけですが、不自然な感じは全くありません。捨て去ったはずの「音楽」や「踊り」に対する、マイクの抑えきれない衝動が見事に表現されていました。
  • そして音楽に合わせたダンスシーンといえば、もう見た人の誰もが絶賛するであろう、最大の見せ場が中盤にあります。ストリッパー仲間のリッチー(ジョー・マンガニエロ)が、コンビニでいきなり踊り出すシーンです。観客はただ一人、レジ打ちをしている無愛想な女性店員のみ。リッチーは「エンターテイナー」としての自信と誇りを取り戻すために、その女性店員をなんとか笑顔にしようと、店内BGMに合わせてストリップ・ダンスを始めるのです。
  • この時点ですごい展開なんですが、そこで流れる音楽が、まさかの「バックストリートボーイズ」の超有名曲「I Want It That Way」っていうのが本当に最高でした!(よく許可でたな!) もうイントロの時点でおかしくてたまらないんですけど、曲に合わせてリッチーがおもむろに服を脱ぎだすわ、スナックの袋を破いて中身をかっこよさげにぶちまけるわ、「テルミーワーイッ!」というサビに合わせて飲料品の棚をガバッと開けて、曲の盛り上がりに乗じて股間に当てたペットボトルをブシャーーーッと噴き出すわ…! 店の外から「外人4コマ」のようなハイテンションで見守っているメンバーたちの姿も相まって、もう劇場は爆笑の渦でした。散々やらかした後の、オチの「一言」も実に効いている。
  • この場面、超コミカルなろくでもないギャグシーンなんですけど、何が素晴らしいって、「エンターテイナーとは何なのか」という本質を見事に突いてもいるんですよね。例のムスーッとした女性店員さん、突然店内で踊り始めやがったリッチーを、当然「はあ?」って感じにずっと冷たく見てるんですよ。(熱心に踊りまくるリッチーと白けた店員の温度差がまた面白いんですけど。)そしてどんなにリッチーが一所懸命踊ったところで、最後まで店員さんは仏頂面のままです。
  • それでも、踊り終わった後のリッチーが漏らした「一言」に、思わず店員さんはこらえきれず「ふふっ」と微笑んでしまう。その表情が、本当にチャーミングなんですよね。リッチーの芸は言ってしまえばほとんど「滑って」いたわけですけど、ずっとブスーッとつまらなそうにしていた女性に、最後に愛らしい笑顔を浮かべさせることができた。この笑顔を生み出せるということが、「エンターテイナー」という人々がもっている真の力なんですよね。あの笑顔にこそ、本作の全てが集約されていると思う。劇場では大笑いしたけど、やっぱり思い返すとグッとくる場面だし、ちょっと泣いてしまいますね。本作を貫く大人っぽいユーモアと優しい視点を象徴するような、素晴らしい名シーンでした。
  • その後も、コンテスト会場に向かう旅の途中で色々な事件や出会いがあったり、「男性ストリッパー」という職業の葛藤もちゃんと描かれたり、もちろん会場での本番ダンスも最高に盛り上がったり、まだちっとも語り足りないんですが、くたびれたのでここまでにします…。イラストも描きたかったな…。また追記するかもしれないです。
  • テーマが「男のストリップ」ということでややハードルは高めかもしれませんが、性別を問わず楽しめる、見て絶対に損はない映画だと思います。さらに『マッドマックスFR』と通じる問題意識も指摘されており、今年の洋画の中でも非常に重要な一本になってくるはずなので、(多少おそるおそるでも)ぜひ覗いてみては。意外と色んな場所でやってるっぽいし…。ではまた。