沼の見える街

ぬまがさのブログです。おもに映画の感想やイラストを描いたりしています。

『傷物語 Ⅰ 鉄血篇』感想

  • 映画『傷物語 Ⅰ 鉄血篇』を、期せずして初日に観たので感想を書こうと思います。おまけの小説もゲットできました(まだ読んでないけど)。
  • 一言感想としては、シャフトらしい尖った映像表現は確かにスゴイんだけど、映画として面白いかって言われると、正直わりと物足りないかな〜…って感じでしょうか。そもそも三部作の一作目で、上映時間もたった60分くらいですから、物足りないのも仕方ないんですが…。
  • 一応説明しておくと、西尾維新原作・シャフト制作の人気TVアニメ「《物語》シリーズ」の、初めての劇場版です。『傷物語』はシリーズの中でもかなり初期の一作ですが、これまでなんだかんだ映像化されてこなかったんですね。そんな『傷物語』が、ここにきて満を持しての映画化というわけです。
  • ちなみに私は、西尾維新の小説だと「《戯言》シリーズ」はかなり好きで一時期ハマっていましたし、「《物語》シリーズ」も第2シーズンまではおおむね面白く読んでいました。(特に『恋物語』はかなり良かった。)ただ、次の『憑物語』がびっくりするほど面白くなくて、いったん読むのをやめちゃったんですよね。『終物語』とか続きも色々出てるようですが、全く読んでません。読めばそれなりに良いのでしょうが…。
  • また、シャフトのアニメも『化物語』と『偽物語』は見ましたが、それ以降は見ていません。『まどマギ』にあれだけハマっていながら…と我ながら思うんですが、なんか足が遠のいちゃって…。いつかまとめて見てみようと思ってます。そんな感じのヌルいファンではありますが、以下わりとネタバレ注意で適当に感想を書いてこうと思います。
  • まず、映像表現に関しては「さすがシャフト」の一言でした。冒頭、アララギくんがゆっくり階段を登っていくシークエンスの異様さと美しさ、そして大量のカラスに埋め尽くされた屋上で待ち受けていた出来事の壮絶さ…。空や建物といった背景の描写も見事で、『まどマギ』などの劇団イヌカレーの美術とはまた違った、独特の無機質な狂気と不穏さを醸し出していました。
  • そうした映像表現の白眉は、予告編でも使われていた、伝説の吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードアララギくんが遭遇する場面ですね。このくだりは圧巻で、「無人の空間に横たわる、四肢を奪われた血まみれの吸血鬼」という原作の鮮烈なイメージを、見事におぞましく、また美しく映像化していました。
  • エロ本を買いに出かけたアララギくんが、静まり返った夜の街でふと点々と続く血の跡を見つけ、それをたどりながら地下鉄の駅に迷い込む。そして(冒頭とは逆に)どんどん地下へと潜っていき、自分を待ち受ける決定的な運命の分かれ道へと向かっていく。白に統一された無人の駅内と、道しるべとなる血の跡が、美しく不気味なコントラストになっていて、大スクリーンで見るに価する映画的な美しさを生んでいたと思います。
  • 残酷描写も映画ならではの容赦なさです。特に「四肢を切断された金髪美女が泣きじゃくりながらこちらに迫ってくる」という、圧倒的な作画力で描かれる倒錯しきった絵面のヤバすぎる迫力には震えました…。もちろん、キスショットを演じる坂本真綾の声の演技もその迫力を倍加しています。妖艶でドスの効いた声から、振り絞るような壮絶な命乞い、さらに少女モードの可愛らしい声まで、その演技の幅の広さは「さすが」というしかない感じ。
  • 原作の饒舌な「語り」を大幅にカットし、いかに映像表現でアララギくんの心情を表現するか?というシャフトの挑戦も見どころの一つ。キスショットの悲鳴に赤ん坊の泣き声がオーバーラップしていく場面とか、ベタながらとても効果的で、アニメならではの非言語表現によってアララギくんの心変わりに説得力をもたせていました。「言葉の少なさ」それ自体が、作品全体に静謐で禍々しい空気を生み出していたとも思います。
  • …と思い出しながら書いてみると「あれ?じゃあ良かったんじゃん」とだんだん思えてきたのですが、やっぱり映画が終わった後に残った感想は「も、物足りねえ…」でしたね…。
  • やはり一本の小説を三部作の映画にするという試みのため、全体として引き伸ばされ薄められているというか、とにかくテンポがモッサリしていることは否めないと思いました。冒頭のアララギくんが屋上へ向かうシーンからして、そりゃ映像表現としてはソリッドでかっこいいんですが、正直「もうかっこいいシーンはいいからさっさと物語を進めてくれる?1時間しかないんだからさ…?」みたいな、身も蓋もないことを思っちゃったんですよね…。
  • 初対面の羽川さんと対話するくだりも、会話の「間(ま)」が非常に長く感じてしまい、体感的にあんまり気持ちよくなかったというか…。西尾維新独特のボケとツッコミにも多少イラッときてしまいましたね…(西尾維新のああいう言葉遊び的なボケツッコミって、そもそもあんまりアニメと相性が良くない気もする)。
  • 羽川さんも、ま~かわいいといえばかわいいんですが、胸まわりの表現とかがあまりに露骨で、「えろい!ヤッター!」というよりは「あざとい…」と冷めてしまってな…。意味もなくスゴイ揺れるんだもん…。(羽川さんって元からこんな描かれ方でしたっけ?思い出せない。)正直、あの手のエロ表現を映画館で見せられるとちょっと気まずいんですよね…。PC的にどうこうの前に、気が散る。
  • まぁ『傷物語』は「おっぱいを揉む揉まない云々」というよくわからないくだりが後半にあるので、今回の羽川さんの不自然に性的な描写もその伏線(?)になっているんでしょう…。原作にも非常に濃厚ですが、「ソリッドで実験的な表現はしてるけど、オシャレで気取った作品ではないんだよ~」という作り手のエクスキューズ(というか照れ)もあるのかな~と思いました。別にオシャレで気取ってたって面白かったら全然いいんですけどね…。まぁその辺の猥雑さ(猥褻さ?)も本シリーズの魅力なんでしょう。キスショットの吸血が完全にセックスを思わせる描かれ方をしていたりとか、性的な描写に必然性が存在するシーンもありましたし…。
  • エロはともかく、そろそろ眠いので終わります。90分の前後篇ならともかく、60分の3本立てとなると流石に「物足りない」という感想が出るのも無理もねぇよな…と思うんですが、いろんな事情があったのでしょう…。とはいえ、何と言っても日本のアニメの最先端を走っている作品だというのは間違いないと思うので、覗いてみては。60分なので気軽に見られますしね(ものはいいよう)。私もなんだかんだ言って続編も見てしまうことでしょう。ここからアクションとかがガンガン増えていって絵的に派手なことになりそうですし(公開は夏なのでだいぶ待たされそうですが)期待してます…。おしまい。