沼の見える街

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映画『FLEE』感想:現実を偽らざるをえない人と、現実を「捻じ曲げる」アニメの力

アニメ映画『FLEE』を観てきた。大変良かったし、アニメファンにとっても重要な作品と思われるので長文感想を書いておきます。関連するオススメ作品も後半でいくつか紹介。

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同性愛者の存在自体が許されないアフガニスタンから、難民として「逃走(英語でFlee)」したゲイの青年の人生を、ドキュメンタリーとアニメーションを織り交ぜた手法で語り直した映画。

その特異な成り立ちもあって、アカデミー賞の国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門に同時ノミネートされたという前代未聞の成果を残した。いま最も熱い俳優リズ・アーメッド(『サウンド・オブ・メタル』『ゴールデン・リバー』他)や、ニコライ・コスター =ワルドー(『ゲーム・オブ・スローンズ』の"王殺し”ジェイミーで有名)といった著名人が本作を支援し、エグゼクティブプロデューサーとして名前を連ねている。

 

世にアニメーション映画は数あれど、本作ほどアニメである必然性が大きい作品は前代未聞と思われる。というのも実写でやると「登場人物」の命が危ないからだ。本作に登場する「主人公」のアミンは、顔も名前も実際のものとは異なり、そのインタビューの様子がアニメ化されていることが一種の「身バレ対策」になっている。アミン自身は現在デンマークで暮らしているのだが、その素性が明かされてしまえば家族や親類にも危険が及ぶだろうし、本人の生活も脅かされるかもしれない。

一方で、よくある(人物の身元を明かせない)実録ドキュメンタリーのように、実写にして顔にモザイクをかけたり声をいじったりしてしまえば、本作の根幹テーマである「難民や性的マイノリティの人々も観客と全く同じ人間であり、日々のごく普通の生活や喜びがあって、理不尽な抑圧に苦しんでいる」という事実が観客にもたらす共感が削がれてしまう恐れもある。だからこそ本作はドキュメンタリー「かつ」アニメーションという手法を選んだのだろう。過酷で残酷な現実を映すドキュメンタリーに、アニメーションという一握りの「嘘」を加えることで、現実の困難に真っ向から立ち向かうことを選んだアニメ映画なのである。

 

いうまでもなく本作が描く内容は今、極めて重要と言える。まずはなんといってもウクライナへのロシア侵攻のせいで大量の難民が生まれている今、難民の人々が陥っている苦境への解像度を上げることが世界的に、これまで以上に求められているのだから。

アミンの語りから、アフガニスタンで生きてきた彼が故郷を追われ、難民となるまでの辛い記憶が物語として構築されていく。a-haの名曲「Take On Me」のメロディに載せた少年時代の回想は、遠い異文化の地で生きてきたアミンの生活を、西洋文明に馴染んだ私たち観客にも身近なものに感じさせる。(脱線するが「Take On Me」が最近、映画などでだいぶ好意的・感動的なトーンで使われるのを目にすることが多く、翻って『ラ・ラ・ランド』での冷笑的な使われ方を思い出して「そういうとこだぞチャゼルお前」とぶり返しがち。名曲やろがい!) 

そうしたアミンに対する親密な視点は本作全体を貫いている。難民がそんな小さな幸せや愛のある生活からどのように切り離され、理不尽に故郷を追われ、とんでもない苦境の中で死んだ方がマシなような思いをしながら、ささやかな助けと平穏を求めて他国にやってくるのか。そうした現状への想像力を働かせるための作品として、まずはシンプルに万人にオススメすることができる。そうした想像を拒否するどころか、むしろ積極的に排外主義を煽る言説が罷り通るような世の中であれば、なおさら重要と言える。

 

だがもっと言えば、すでに500万人を超すウクライナ難民が、比較的スムーズに周辺諸国に受け入れられて(難民に固く門戸を閉ざしてきた日本でさえ1000人ほど受け入れて)いる現状に対して、アフガン難民などになぜ同じ対応ができなかったのか、その違いの根底にあるのはレイシズムではないのか、といった批判的な声も目立つようになりつつある。難民救済という切羽詰まった状況においてさえ、人種や経済にまつわる差別が根ざしうることを直視させる作品としても、本作は大きな意義をもつ。

特に「クルーズ船」の場面は最も痛烈だった。決死の思いで海を越えてきた難民ボートの人々を、巨大な船から見下ろしながら、カメラを構えて呆然と突っ立っている裕福な乗客の姿は、どこか遠い場所の遠い悲劇として難民問題を「他人事」として捉えて消費しがちな、私たち観客のあり方と重ねざるをえなかった。おそらく本作の作り手は、自分たち(作り手)自身のカリカチュアとしてもあの場面を描いたと思われるが、だからこそグサリと刺さるものがあった…。

 

そして何よりも、アフガニスタン難民であり、かつ性的マイノリティ(ゲイ男性)として生きてきて、周囲に対して常に(二重の意味で)自分を偽らざるを得なかったアミンによる、極めて個人的で生々しい語りこそが、『FLEE』を特別な作品にしている。

ジャン・クロード・ヴァンダムに対する少年期の性的な憧れや、暗黒の旅路にわずかな光を灯すささやかな恋心、親類に言われた(悪気はなくとも異性愛規範的な)何気ない一言に傷つく心など、性的マイノリティとしての人生に基づく様々な体験が丁寧に語られていく。アミンの人生のこうした「ままならなさ」は本作独自のアニメーション表現の手法とも見事に一致しているように思える。

Flee - movie: where to watch streaming online

本作の冒頭で、アミンが少しぎこちなさそうに、緊張しつつ、本作の監督であるヨナス・ポヘール・ラスムセンのインタビューに応えようとしている。続いて、実はアミンが寝そべった状態で話していることがわかる。これは(パンフによると)ドキュメンタリーなどを過去に手がけてきたラスムセン監督おなじみの手法らしい。できるだけ取材対象にリラックスしてもらい、過去の辛い記憶などを掘り下げて話してもらうための配慮なのだろう。

日本のアニメを見慣れている観客からすると、この冒頭のアニメーションから「おっ?」と驚く人が多いのではないか。というのも、いわゆる(作画枚数を増やして)「ぬるぬる動く」系の動きとは正反対で、コマ数を減らすことで「かくかく」した動きになっているので。

インタビューパートは、実際に撮ったドキュメンタリー映像をアニメに落とし込む手法であるため、あまりフィクションのアニメのように「ぬるぬる」させると嘘っぽくなってしまう、もしくは生の語り口と合わなくなってしまうことからも、(別に省エネとかではなく)意図的にコマ数を落とす判断を選んだのだろう。

さらにアミンの語りから浮かび上がる過去の回想パートは、当然ながらドキュメンタリー映像が元ではなく、一からアニメを作っているのだろうが、こちらもインタビューパートと同じく「かくかく」した動きになっている。こうした「スムーズでない」アニメの質感が、何ひとつ「スムーズ」にはいかない厳しい現実と、2Dアニメ世界のフィクションの狭間にいるような、絶妙な違和感と実在感を本作の人物たちに与えていて、観たことのない斬新なアニメ効果を生んでいると感じた。

本作の2Dアニメはコマ数こそ少ないものの、作画や色彩やレイアウトといったビジュアル面は全体に高品質なこともあり、安っぽい印象は全く受けない。最近よく思うことだが、(日本のアニメ界で至高のものとされてるっぽい)「ぬるぬる動く」感だけがアニメの魅力では全くないよな…と改めて実感した。

本作のアニメのスタイルとしてはもうひとつ、アミンの記憶の中でも特に生々しく辛いものを、より抽象的な線と色のみで描く手法をとっている場面もあり、そちらも作中で非常に効果的な役目を果たす。(重厚な社会的テーマも大切だが)アニメーション表現そのものに関心がある人にもぜひ観てほしい一本となっている。

 

アニメ表現といえば、本作の表現技法に関して、ラスムセン監督が以下のような興味深い発言をしていた。

 

「これらの私的な物語を語る過程で、私は常に新しい方法や新しいアプローチを探求しようと心がけています。語られる物語に沿うように、映画の形式を捻じ曲げる方法を探るのです。」(『FLEE』パンフレット 監督声明より抜粋)

 

この「捻じ曲げる」という、一般的にはネガティブな意味合いで使われる言葉チョイスに興味を惹かれた。たしかに監督の言うように、『FLEE』はドキュメンタリーの形式も、アニメーションの形式も、そして(人物の顔や名前といった)事実も、どれも少しずつ「捻じ曲げる」ことによって生まれた作品である。

フェイクニュース問題をはじめ、現実を「捻じ曲げて」伝えることへの危惧は近年高まるばかりだが、その一方で本作が体現するように、従来の形式や事実をある意味で「捻じ曲げる」ことによってしか伝えられない"現実"もある。とりわけアフガニスタンから逃走するゲイ男性のように、何重ものマイノリティ性を抱え、社会の隅に追いやられた人々の物語を伝える場合はなおさらだ。

国籍と性的指向という二重の「秘密」を抱え、信頼していた恋人に裏切られたこともあるアミンにとって、ありのままの「現実」を伝えることは危険であり、他者に対して心を開くことは難しかった。しかしアニメーションという、現実と虚構の間を繊細に行き来できる表現手法をもつ本作を通し、アミンは自分の過去や記憶と向き合い、彼自身の"現実"を世に伝え、新たな人生に向けて一歩を踏み出すことができた。アニメーションがもつ現実を「捻じ曲げる」力を、かつてないほど有意義に発揮した本作のあり方は、現実を偽って生きざるをえなかったアミンの人生を、特異な形で肯定し、慰め、励ましているとも言えるのではないだろうか。

 

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「現実を"捻じ曲げる"ことで、社会に脅かされている人々の現実をあぶりだす」作品である『FLEE』の、精神的な姉妹作と言える映画が、奇しくもつい最近公開されている。『チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー』である。

こちらはアニメではなく、ディープフェイク技術によって取材対象のプライバシーを保護しながら、家父長的で横暴な権力に踏み躙られる性的マイノリティの地獄のような現状を観客に伝えている。だからこそ後半、ある人物のディープフェイクが「解除」される場面の驚きと感銘は忘れがたい。『FLEE』同様、本作も極めて志が高く挑戦的であり、結果としてそれぞれの表現技術の新たな可能性すら導き出している。マジで相当にキツイ作品だが、ウクライナ侵攻のせいで性的マイノリティの安全がいっそう危機にさらされている今、非常にタイムリーで重要な1本となってしまったので、余裕あればトライしてほしい。

 

アフガニスタンの市民の苦境を描く、『FLEE』と同じ海外アニメーションとして、『カブールのツバメ』も想起した。こちらは女性に対する抑圧がメインに描かれるが、女性差別と性的マイノリティ差別が完全に地続きであるということが、『FLEE』とあわせて見るとよく理解できると思う。(規模と程度こそ違えど)どちらの差別もいまだに苛烈である日本もまったく他人事ではない。

 

そしてアフガニスタンが舞台の海外アニメーション映画といえば絶対外せないのは、『ウルフウォーカー』でおなじみカートゥーンサルーンの名作『ブレッドウィナー(別タイトル:生きのびるために)』。

アフガニスタンが舞台のアニメといえば…的な知名度を(海外アニメファンの間では)そこそこ獲得してきた名作と思うが、未見の方も多いと思うし、Netflixなどで気軽に観られるので大変オススメ。

 

さらに戦争によって弾圧されてきた人々の人生を、『FLEE』と同じく温かみを感じさせる語り口と、圧倒的なアニメーション技術で描く、今年のアニメ映画『アンネ・フランクと旅する日記』もイチオシ。

今ちょうど劇場公開も配信/円盤もなくて見る手段がないかもだが…。まぁそのうち配信とか来るでしょう。

 

ついでにではないが、北朝鮮の収容所の悲惨な状況を生き延びる物語『トゥルーノース』も、素晴らしい海外アニメ映画なのでオススメしておきたい。

CGアニメ表現のローポリな「荒さ」が、むしろ苦境の中で生きるキャラクターたちに絶妙なリアリティを与えているという意味で、ジャンルやテーマこそ違えど『FLEE』と共通する長所が多い作品だと思っている。

 

このように、戦争や差別や排外主義といった重厚かつ社会的なテーマを、多かれ少なかれ現実を「捻じ曲げる」というアニメーション(やディープフェイク)の力を正当に駆使して、実写には不可能な形で力強く観客に突きつける名作が、このところ凄い勢いで世界中から生まれていて、アニメファン的にも目が離せない。『FLEE』はアカデミー賞の話題などもあって、広く認識されるチャンスも多そうだし、心から応援している。

願わくば日本アニメ界からも、こうした真摯でタイムリーなテーマ性をもつ作品が生まれてほしいとアニメファンとしては切望しているのだが、現在の日本アニメ業界の構造や雰囲気などを考えると、いつになるやら想像もつかないというのが正直なところである…。(最近だと強いていえば『犬王』の一部の描写は「おお」と思ったかな。)まぁ諦めずにまずは海外の素晴らしいアニメ作品の魅力を伝えていくところから、地道に積み上げていくべきなのでしょう。

さまざまマザー!どうぶつ界の「母親」図解

「母性本能」という社会通念がいまだに根強く広まっているように、まるで(ヒトを含む)全動物に共通する性質であるかのごとく語られがちな「母性」ですが、実際にはもっと複雑で多様のようです。適当だったり熱心だったり人間から見ると残酷だったり、動物界の多彩な「母親」事情を図解しました。ゴリラとオランウータンなどなど。

 

<テキスト>

(人間も含め)動物であれば皆共通して持っているかのようにひとくくりに語られがちな「母性」。だが「母」のあり方は本当にそれほど単純なのだろうか。まず、人間と同じ霊長類であるゴリラを見てみよう。ゴリラの母親の子育ては、基本とことん「放任主義」だ。よほど危ないことをしない限り、子供の好きにさせる。群れの仲間や、自然での体験を通して子どもは社会性を身に付けていくのだ。

「放任主義」の母親ゴリラではあるが…自分の子どもが、群れの他の母親の子どもとケンカする等ひとたびトラブルが生じたら…100%自分の子の味方をする!ケンカの相手が
年下の子だったり、もし自分の子どもに非があったりしてもおかまいなしだ。いわゆる「モンスターペアレンツ」的な行動にも見えるが…絶対的な「母親」という味方がいるおかげで子どもたちは安心して、のびのび振る舞えるようだ。

逆に、父ゴリラは一貫して「弱い方、負けている方の味方」をするという。母親の立場が弱かったり、母親がいなかったりする子供の一種のセーフティネットとなる。こうしたバランスの上で、ゴリラの群れの子供たちは平等に仲良く育っていけるのだ。

一方、同じ霊長類のオランウータンの子育ては、ゴリラと正反対だ。母親は長期間にわたって手厚く子供をケアする。オランウータンは孤独な生活を送るので「ワンオペ育児」だ。「少ない子を大事に育てる」繁殖戦略をとる霊長類の中でも、オランウータンは究極の例。子どもの生存率は地球上でトップクラス!メスが初産(15歳)まで生き残る確率は、「94%」という脅威的な高さ。(比較:チンパンジーは50%)これを上回る「動物」は、先進国にすむ人間だけだ。

多種多様な果物のどれを食べるべきかの判断や…枝やツルをつかむ難しく危険な移動など…子どもは長い時間をかけて、親から多くを学んでいく。

同じ霊長類の間でさえ、大きく異なる「母親」のあり方。ほかの動物となると、さらなる混沌を極める…!

ジャイアントパンダ:双子の片方は育児放棄!

ハムスター:子どもを食べる(他の子を育てるエネルギーのため?)

ウサギ:産んだ子どもは巣穴に置き去り。その後は1日2分しか巣穴を訪れない(捕食者から子どもを隠すためでもある。)人間から見れば奇妙に思えたとしても、動物たちは
多様な「子育て」の方法を、進化の中で獲得してきた。

確実に言えるのは、動物みんなに共通する「母親の"正しい"あり方」など存在しないということだ。「母親かくあるべし」と都合よく語られがちな「母性」という概念は人間が作り上げた幻想にすぎないのかもしれない。

 

参考文献にあげた本『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』、出版情報のリンクはこちら。

www.utp.or.jp

図解したゴリラやオランウータンの他にも、イルカとか鳥とか魚とか虫とか色々な動物の驚きの子育て術がたくさん載っていて、自然界の多様さを学ぶために面白い動物本なので読んでみてください。(寄稿してる動物研究者がみんな育児経験者というのもユニーク!)

 

4ページ目のその他の哺乳類の「母」エピソードは、ナショジオが出してる以下の本を参考にしました。残酷なようで合理的でもあるので、なんともいえない気持ちになりますが…。これもまた「母性」の一面とも言える。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

あと直接的な参考文献ではないけど、触発された本は、『母親になって後悔してる』。

こちらの本、かなりヘビーな内容なんだけど凄く色々考えさせられる内容でして。人間の母親にけっこう乱暴に「母性」という概念が押し付けられがちだよなあということを、特に生物クラスタとしては向き合わざるをえないなと。ここで考えたことを図解に反映してみました。

こんな感じで、人文的なテーマの本や映画がきっかけとなって、科学ジャンルの図解を描きたくなることもわりかしあるのでした。文系と理系の探求は表裏一体で切り離せないという一例かも。紹介した本、ぜひ読んでみてください。

美脚ウォーカー!「タテガミオオカミ」図解

美脚のイヌ科「タテガミオオカミ」の生態を図解しました。すらりと長い脚で南米のサバンナを歩き回る、オオカミのようでオオカミじゃない(キツネでもない)不思議な動物です。意外とヘルシーな食生活にも注目!

オオカミでもキツネでもないユニーク動物「タテガミオオカミ」ですが、図解にも書いたように、最も近い関係にあるのが19世紀に絶滅した「フォークランドオオカミ」という研究結果もあります。『絶滅どうぶつ図鑑』で図解していたのでこっちも読んでみてください。言われてみれば生息地もわりと近い。

本物のタテガミオオカミの動画。歩く姿もどこかイヌ科離れしているというか、むしろ大型ネコ科を思わせるような優雅な気品を漂わせている。本物にお目にかかりたいものだ。(ブラジルの修道院で伝統的に行われているタテガミオオカミ・ウォッチングの図)

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渡りシーズン!シギの皆さん図解

近所の水辺にシギの皆さんが大勢いらっしゃるので図解してみました(他にもいるけど)。ヤバいほど長距離の渡りトラベルの途中で日本に立ち寄ってくれているシギもいます。飛んだり食べたり休んだりピピピ!と鳴いたりカニを襲ったり、にぎやかで楽しいので堪能しましょう。再び飛び去ってしまう前に…

もうすぐいなくなっちゃうシギの筆頭候補はオオソリハシシギかな。以下の記事を読んでそのスケール感に思いをはせましょう〜

www.wwf.or.jp

クイナな瞳!「オオバン」図解

黒くて丸っこい水鳥「オオバン」の図解です。カモのようでカモでない、でも泳ぎも歩きもお手のもの!な万能型バードなのですが、ちょっぴり不器用な一面も。そんなオオバンが巻き込まれたトラブルに出くわした、ある日のエピソードもご紹介します(突然のエッセイ漫画形式で)

ちなみに図解と漫画のベースにしたのはこちらの出来事。

図解にも書いたけど一応補足すると、今回のオオバンは「ネコの襲撃を現行犯で目撃」「放置するとほぼ確実に死ぬ」という諸条件を考慮した上で保護(つっても一瞬だけど)しましたが、可能な限り野生動物の命運は自然に任せましょうね! 私もオオバンを襲ってるのが(ネコではなく)タカとか他の野生動物だったら、かわいそうだけど放っておいたことでしょう…。ただネコはどうしても「自然」扱いはできないというか、極めて人為的かつ例外的な動物なのです。

この辺のリンクもご参考に。ヒナの季節でもあるし。

www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp

 

野ネコ問題についてさらに学ぶ上でオススメな本。

Amazon - ネコ・かわいい殺し屋―生態系への影響を科学する | ピーター・P・マラ, クリス・サンテラ, 岡 奈理子, 山田 文雄, 塩野﨑 和美, 石井 信夫 |本 | 通販

 

『ゆかいないきもの超図鑑』でもネコ問題を思いっきりフィーチャーしてるので読んでみてね!(ラストのラストですが)

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教科書「高校生物基礎」のイラスト等を担当しました。

このたび、高校の「生物」の教科書(実教出版さんの「高校生物基礎」)イラスト等を担当させていただきました。挿絵などの本文イラスト、生物トピックの解説図解、マンガ、ガイド役のキャラクターのデザインなど。すでにこの4月から学級で使われ始めているとのことで、好評の声もいただいているようで、たいへん光栄に思います。生物を学ぶ皆さんの勉強を楽しく彩れるよう工夫しました! 

 

実教出版さんの「高校生物基礎」のホームページはこちら。

https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/22018022

デジタルパンフレットで中身もチラ見できます。

https://www.jikkyo.co.jp/material/dbook/rika_seibutsu_r05/?pNo=22

 

表紙はこんな感じ。(おもて表紙のイラストは私ではないのですが。裏表紙にはちょっとした遊び心のあるイラストを仕込ませています。入手したら見てみてね)

「生物基礎」の範囲はかなり広く、生命の基本や遺伝、人体の仕組み、生態系など多岐にわたります。理解の助けになるように、挿絵や漫画をいくつか描き下ろしています。ふだんの著作(生き物図鑑系)では扱わない生物トピックもあってなかなか新鮮でした。

こちらは人体の免疫に関する分野をマンガで解説したもの。

見せびらかし屋さんの樹状細胞はお気に入りです。「ウワーッ」があるのは動物界も人体も同じ…!

教科書全体に登場する、ガイド役のキャラクター(動物モチーフ)も作りました。

生徒役のウーパールーパー「うぱる」。生徒さんの年齢なども考慮しつつ、ああでもないこうでもないと出版社さんと協議を重ねました。

ワオキツネザルの「ワオ先生」。しっぽアクションが気に入ってます。

それぞれ動物モチーフから考案した先生キャラがあと4人いるのでお楽しみに。生徒さんが勉強中にちょっと癒されてくれるといいなと思います。私的お気に入りはエイのエイミー先生。

 

当然というべきか、私の得意分野である動物トピックに関しても、けっこうなページを割いてイラストや図解を描いています。巻末の絶滅危惧種の図解ページはなかなか豪華です。

トキ図解&漫画もあるよ。

 

動物のみならず、人間のイラストも意外と描いてます。セリフ回しなどはこちらに任せてもらったので、会話がカジュアルな雰囲気になるよう工夫しました。

その結果どうしてもこう…ある種の作家性が隠しきれていませんが……(でもサンプルページに選ばれててちょっと笑った)

あと(教科書なので)定番の偉人伝とかもあったりします。メェ〜!!

 

教科書なので、まずは生徒へちゃんと行き渡ることが最優先と思われますが、おそらく個人の方でも購入は可能と思いますので(私もたまに教科書とか資料集とか買うし)、ご興味ある方は最寄りの書店で探したり取り寄せたり、以下の「教科書供給協会」のHPから最寄りの取次店などをチェックするなどしてみてください。

www.text-kyoukyuu.or.jp

 

すでに生きもの本を5冊も作っている私ではありますが、まさか教科書イラストまで担当することになるとは思っていませんでした。実教出版さんと丁寧にやりとりしつつ、シビアな(シビアなんです!)教科書検定もクリアできるよう試行錯誤を重ね、このたびついに学級で使われる運びになり、光栄に感じています。若い学習者(若者に限らないですが!)の皆さんの知的好奇心を、少しでも刺激できる役割を果たせたらとても嬉しく思います。

 

おまけ:Twitter

教科書だしウワーッは自重するべきかなと思ってたけど「OKです!むしろやって(大意)」と言われたので通常営業でウワーッしてます…! とはいえ基本的には真面目で誠実きわまりない教科書なので…ご安心ください!!(誰に…)

 

私の作家性が何の遠慮もなくフルスロットルで溢れ出ている本も3月に出ましたので、教科書では物足りないぜ!!という方はこっち読んでね。

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小さな架け橋!ロシアデスマン図解

知る人ぞ知る不思議な動物「ロシアデスマン」の図解です。奇妙な長い鼻を駆使し、地を這い水を泳ぐ謎だらけの哺乳類。ロシアとウクライナの国境にまたがって生息する「架け橋」のような動物でもあり、その生態と運命に今こそ注目すべきかもしれません。

こちらの「ウクライナ動物図解」とあわせてどうぞ。

numagasa.hatenablog.com

 

<参考ページ>

ロシアの科学者がロシアデスマンを保護しているという数ヶ月前のニュース。この少し後にウクライナ侵攻が起こってしまい、悲しすぎる。戦争なんて市民はほとんど誰も望んでいないと信じたいとこですが…。

wilderness-society.org

元気に動いてる野生のロシアデスマンの動画が見られるブリタニカのページ。めっちゃ撮影難度高いだろうによくこんなばっちり撮れたな、夜行性なのに…

www.britannica.com

 

ロシアデスマンの危機っぷりを解説するページ。

https://www.nwf.org/Magazines/National-Wildlife/2004/Deadly-Days-for-the-Desman

 

ウクライナ侵攻で特に危機にあると思われる野生動物のリストアップ記事。(イタリア語)

www.kodami.it

 

FANBOXでおまけ図解も(支援者限定ですが)公開してます。支援がてら、よろしければ〜

www.fanbox.cc