沼の見える街

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『カオス・シチリア物語』みた

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  • 映画『カオス・シチリア物語(原題:KAOS)』を観た。かーお〜すー。
  • 観たといっても映画館ではなく、YouTubeで観た。30年くらい前(1984年)の作品で、イタリアの短編集を原作にしたオムニバス映画。
  • 原作者はルイジ・ピランデッロという、シチリア生まれの作家。日本だとそんなに有名じゃないようだが、ノーベル賞もとってる偉い人なのですよ。
  • 一応説明すると、シチリアっていうのはイタリアの南の方にある島。イタリアを長靴だとすれば、サッカーボールみたいに蹴られてる大きな島です。『ゴッドファーザー』とかで知られる「マフィア」が誕生した物騒な土地、というイメージが強いかもしれない。
  • ちなみにジョジョで言うと…あ、ジョジョ5部にはシチリアは出てきてないのか。残念(すぐジョジョで言おうとするなよ…)。スピンオフ小説『恥知らずのパープルヘイズ』ではシチリアが舞台になってるんだっけ。読んだけどイマイチ覚えてない…。
  • さて、この映画『カオス・シチリア物語』はその名の通り、シチリアにある「カオス」という名の土地に生きる人々を描いたお話。一身上の都合により(?)最近このピランデッロという作家を読みあさっているのだが、その最も優れた映像化作品ということで、ずっと観たいと思っていた。
  • しかし…いかんせんマイナーなのか、amazonで中古が17000円とかするし、レンタルとかもなさそうだし、だめかとあきらめていたところ、YouTubeにしれっと置いてあった。あるんかい。でも嬉しい。ネット万歳ですわ。さっそく鑑賞。
  • 3時間と長いけれど、シチリアの無骨で雄大な自然が鮮烈に迫ってくる、美しい作品だった。まあ海外の動画なので字幕とかもないため、原作をチェックしながらの鑑賞になり、さらに原作とも微妙に話が違うため、理解できてないところも多いのだが…。それでも特異な魅力と迫力が感じられ、いまだに人気があるのもうなずける、凄い映画だと思う。
  • イラストに描いたのは、一番最初のエピソード。カラスが人間たちに捕まっていじめられるのだが、飽きた人間たちはカラスに鈴をつけて空にはなしてやる。リンリーンと鈴を鳴らしながら、気持ちよさそうに広大な蒼い空を舞うカラス。この青と黒の静謐なイメージ、とても好き。青と黒…青ほむ(うるさい)。
  • そこからしばらくカラスの視点になり、シチリアの自然や町並みや遺跡を天空からとらえたシークエンスが続く。その美しさに圧倒されるので、最初の5分くらいだけでも覗いてみてはいかがでしょう。「kaos pirandello」でググると出ますよ。
  • このカラスを一種の狂言回しにして、全6話の短編がつながるという構成になっている。悲しい話、恐ろしい話、笑える話など、バリエーション豊か。まあ、とはいえ全部イタリア語なので、初見だとやっぱりツライか…。
  • 言葉がよくわからなくても雰囲気でたのしめそうなのは、『LA JARRE (壺)』でしょうか。動画だと1時間26分くらいから。オリーブ農場のでっかい高価な壺がある日まっ二つに割れてしまい、激怒する農場主。そこに伝説的な腕を持つ職人があらわれ、みごと接着剤で割れた壺をくっつけるのだが、うっかり自分を中に閉じ込めてしまい…?というお話。「閉じ込めてしまい…?」じゃないよ全く。アホすぎるだろ。でもアホな展開に和みます。
  • あとはその一つ前、ホラー調の『Mal di Luna 月の病』とか。月光に照らされると発狂してしまう病に侵された男の物語。その妻である女性、なかなか可愛いイタリア美人。きっちりOPPAI(専門的なイタリア語)を見せてくるあたり、映画に大切な要素が何かということを、作り手たちは理解していますね。たいへん美しいOPPAI(学術的なイタリア語)でした。
  • たわごとはともかく、素敵な映画でした。(真っ白な砂の丘と蒼い海の対比が見事なラストシーンも必見!)それにしてもシチリアというのは独特な世界だとつくづく思う。実は過去に一度だけ行ったことがあるのだが、両極端の自然と文化が混ざり合い、不思議な魅力を生み出している場所だった。支配層が激変し続けたこともあり、キリスト教イスラム文化が合流しているという特徴がよく指摘されるが、それだけが要因でもないよなあ。引き続き考えてみたい。
  • ちなみにシチリア、治安が悪い悪いと言われてはいるけど、私はとくに危ない目には合わなかった。せいぜい犬に追い回されたくらい(えっ)。ああ、パンがこの世のものとは思えないくらいおいしかったな…。また食べたい。
  • 今日はこの辺で。たまには公開中の映画じゃなくて、昔のマイナーな作品について書くのもいいですね。今後も地味に好き勝手やります…。きのうの二作品についても、また。