沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『チャッピー』再考

  • それにしても昨日の私は、「百合力53万」などという枕言葉を用いておきながら、一体どうして「百合ーザ様」というフレーズを思いつかなかったのだろう。思いついたけどくだらなすぎるからやめた、ではなく、脳裏をよぎりさえしなかったのだ。100人中100人が思いつくことだろうに。本当に不思議だ。脳の神秘に想いを馳せずにいられない。まじで。
  • さて、月曜に観た映画『チャッピー』について、せっかくなのでもうちょい書きたい。「楽しいっちゃ楽しいが、もうひとつだったかな〜」というようなことを書いたが、かなり良い評判も聞きますね。全体的なクオリティが高い映画なのは確かだし、「金返せ!」物件では全くないです。
  • 世界最凶の街ヨハネスブルグに住む「ヒャッハー!」な人たちが、まさかの「子育て」をするはめになるというプロットなんて、実に魅力的でしたよ。ジャンルとしては「人工知能」ものというよりは、明らかに「子育て」ものとして見るべきですな。今まさにお子さんがいる人とか、共感&ハラハラ&感動できるのではないでしょうか。子供連れで行くのもいいかもしれません。ちゃんと残虐なシーンもカットされていますしね!(泳ぐ目)
  • ただやっぱり、私がもうひとつ物語に乗れなかった理由は、やっぱり全体に漂う「嘘臭さ」かなあと思う。「ロボットが知能をもつ」という物凄い大嘘に、リアリティを持たせる工夫があまりなされていないというか、そもそもその気がないというか…。「いくらなんでもそうはならないだろ」というツッコミを入れる余地がかなりあって、それがノイズになっちゃったな、と。うーん。まあ「ツッコミどころ」はこの監督の味でもあるわけだし、難しいのだが。
  • 最近本を読んで仕入れた知識だけど、現実には人工知能ってまだ全然実現してないんですって。高度な計算処理ができるだけのプログラムを「人工知能だよ〜!」と謳っている例はいくらでもあるけど、人間のように物事を「認識して考える」本物の「AI(人工知能)」の実現は、まだまだ夢物語のようだ。
  • そんな中で、Google社が開発するコンピューターがたくさんの画像の中から「ネコを認識した」ということが、世界を揺るがすほどの超大発見として扱われているそうな。詳しい説明は(私もよくわかってないので)省くけど、「特徴をとらえて概念化する」という人間の脳のメチャクチャ重要な機能を人工的に再現できた、という事実がとにかく凄いのだと。「ふーん…」って感じだが、「ネコ認識」、人工知能の実現へのかつてないほど大きな一歩だそうです。
  • 逆に言っちゃえば、「今のところはそんなもん」ということだ。もちろん、「だからフィクションも現実に合わせろ!」なんていう気はさらさらない。SFですものね。でも、人工知能という技術の「現状この程度」感からあまりに離れ、チャッピーを最初から最後まであまりに人間っぽく描いてしまったことが、何かSFとしての重要な面白さを損なっている気がするんだよな…。
  • 比べるのもなんだが、その点『ベイマックス』は本当に上手かったと言わざるをえない。あの話の何がスゴイって、ベイマックスには別に「心」はないってトコなんですよね。あのロボットは「優しい」のではなく、プログラムに則って事務的に役目を果たしているだけ。だからこそ「SF」として秀逸だったし、そのうえで人の心を打つ感動作になりえた。
  • なんつーかチャッピー、せめて前半は、人工知能としてもう少しショボくてもよかったのにな〜、って思う。最初から「中に人間はいってんじゃねーの」って思えちゃうくらい人間っぽいんじゃなくて、それこそ「チャ…チャッピーがネコを認識した!?」程度のところから始めてくれた方が、現実ともリンクしてる上に面白かったと思うのだが。そんなことないですかね。
  • なんかキレの悪い感じですが、今日はこのへんで。いや、面白かったんですけどね…。なんかノレなかったんスよ。そういうことってありますよね。脳の神秘ですかね(無理にまとめてみる)。