沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『ARIA The AVVENIRE』観た。

  • 映画『ARIA The AVVENIRE』を観ました。新宿ピカデリー、1300円。
  • 天野こずえの人気コミック『ARIA』の劇場版アニメです。(原作に対する私の思い入れはこちらを参照→「発掘の『ARIA』 - 沼の見える街」)長さは60分くらいで、短めの独立したお話が3本入っているという構成でした。アニメの最終回の「その後」が描かれるんだけど、その3本のうち2本では「思い出話」的な感じで、原作のまだアニメ化されていないエピソードが改めて語られるという作りなので、実質的な「その後」エピソードは全体の半分くらい。
  • 1話目では、大人になった灯里が、ある日たまたま、藍華とアリスに再会するところから始まる。仕事中だったので言葉を交わすことなく3人は別れるが、それをきっかけに灯里の脳裏に過去の思い出がよみがえる。その思い出というのが原作にもあった、晃先輩と一緒に誕生日のアリシアさんを探すエピソード。
  • まず、第1期のオープニング曲『ウンディーネ』が流れる冒頭からして、テンション上がりましたね〜。…テンションがアクア・アルタでしたね(言い直すほどのことか)。本作、3つのエピソードのそれぞれの頭で1〜3期のOPが流れる構成になっているので、アニメシリーズの長年のファンほど感涙ものでしょう。TVアニメはほとんど未見の原作主義者である私でさえ(なぜか1期のサントラはよく聴いていたため)「ARIAが始まった…!」という感慨がきらめくさざ波のごとく押し寄せてきました。恥ずかしいセリフ禁止!!
  • 最初の、灯里・藍華・アリスの主人公トリオが久しぶりに邂逅するシーンもとても良かった。偶然出会ったからといってはしゃぐことも、ベタベタすることなく、穏やかな表情を浮かべながら、無言で別れていく3人。もちろん「仕事中だから」ということなんだけど、3人がすでにそれぞれの道を歩き出している、ということが伝わってくるのが、頼もしくもあり、切なくもあり…。「きっともう昔のようには、気軽に3人で会えたりしないんだろうな…」と思う一方で、同じ街で暮らしているお互いの存在を感じ取っているだけで幸せ、みたいなより強固な信頼関係が育っているのかも、とか想像できたりして、個人的には一番グッときたシーンだった。
  • それに続く「思い出話」も、内容はほぼ原作マンガ通りなんですが、やはり劇場版だけあって作画もTVシリーズより格段に良く、満足感が大きかった。技術的な進歩も手伝って、ネオ・ヴェネツィアの夕暮れの風景や水の表現も実に豊かさを増していた。晃さんがアリシアさんにプレゼントを投げるシーンの迫力はちょっと笑った(地味に劇場版クオリティで)。
  • この話をチョイスしたのも、「アニメ化できなかったエピをこの際だから片付けようぜ!」的な安い志ではもちろんなく、ちゃんと今の灯里たちの現状に対応しており、他の2つのエピソードとも響き合っていて、よく考えられている。映画オリジナル要素としては、(今は亡き河井英里さんが歌う)アテナさんの歌の使い方が素晴らしい!
  • 2話目は、前半でアイちゃんと2人の新キャラの出会いを描く。この手の劇場版で、完全にぽっと出の新キャラに尺を割くのって結構チャレンジングだと思うけど、2人ともちゃんとキャラを立ててくるあたり、「単なる同窓会では終わらせんぞ」という気概を感じますね。続編への欲というよりは、タイトルの「AVVENIRE=未来」という言葉からもわかるように、灯里たちに続く子たちをちゃんと描きたいという想いがあったのだろう。欲もあるかもしれないけど(生々しい話禁止!)
  • 2話目の後半では、再び灯里の思い出話になって、猫妖精ケットシーとの別れのエピソードが語られる。さっき静かにすれちがっていく3人の姿を見ていただけに、思い出の中とはいえ、灯里・藍華・アリスの主人公トリオが楽しそうにはしゃいでいて嬉しくなる。やっぱりこの3人組の関係性は素晴らしいものがあるな…。完成されている。「まどほむさや」ならぬ「あかあいアリ」ですね(アリの名前みたくなった)。
  • クライマックス、ケットシーとの落下シーンも、スクリーン映えしていて綺麗でした。ただ欲を言えば、「不幸の石」に乗った灯里にはもっと「フッ」て感じで消えて欲しかったかな…。「ミュイーン」って光りながら沈んでいくので、宇宙船の床みたいでちょっと笑ってしまったぜ…。原作ではどうなってたんだっけ(最終巻が見つからないのでわからない)。ささいなことですね。ささいなツッコミ禁止。
  • ていうかこの話めっちゃ重要なのにアニメではやれなかったのか…世知辛い。でも結果的には、映画までとっておいて正解だったかも。幻想的な世界との「別れ」、つまり灯里の「子ども時代の終わり」を描いた、切なくも優しいエピソードであり、本作のテーマにも合致しているし。
  • 最後の3話目は大団円で、全員集合的なエピソード。ネオ・ヴェネツィアアクア・アルタ(高潮)が来たのをきっかけに、先輩たちへの日頃の感謝を込めて、アイちゃんトリオがあることを企画する…的な、ARIAらしいのんびりしたお話。原作ではあまり語られなかった、最終回付近のアリシアさんの心情も明らかに。「現在→過去→そのさらに過去→現在」みたいに、けっこう時制と視点が入り組んでおり、ちょっとわかりづらいのだが、まぁシリーズファンなら大丈夫でしょう。
  • そこから再び「歌」にまつわる感動的なクライマックスが続き、静かに映画は終わる。それぞれの世代が楽しそうに歩いていくエンドロールも、これまでの時の流れにしみじみすると同時に、「時間は不可逆であり、止められない」という『ARIA』独特の切なさも醸し出していて、グッと来ざるをえなかった。
  • ……と、こうして良かったところを書きだしてみると、文句のつけようもない傑作だと思われるかもしれないけども…やっぱり一本の映画として「ARIA?知らないし興味もないぜ」って人に強く勧められるかというと、それはまた別の話かな〜って感じ。「ARIA面白そう!」っていう新規の方にも、この映画から入るのはあんまりオススメしないかな…。下手にネタバレを食らうことなく、普通に原作かアニメから入って、灯里たちの日常を最後まで見届けてほしい。…とはいえ、とても誠実で丁寧な「嬉しい」劇場版であることは間違いないので、ファンの方は確実に一見の価値ありかと。
  • 本当なら、面倒くさい原作至上主義者としては、アニメ版と比較しつつ「いかに漫画版のARIAが凄いか」とか語ってみようかな、とか良からぬことを考えていたのだが、原作6巻のアテナ先輩のセリフ「きっと本当に楽しいことって 比べるものじゃないよね」…というセリフにしたがって、今日は終わります。原作の素晴らしさと恐ろしさについてはまた別個に語ろう…。まったくARIAは最高ですね。では。