沼の見える街

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「かけだすモナカ」見た!

  • 先週の日曜に開かれた『響け!ユーフォニアム』番外編上映会で上映された番外編「かけだすモナカ」の感想を書きたいと思います! なるべくネタバレは控えていたんですが…もういいよね。ブルーレイ最終巻、出たしな。…本来はディスクの特典映像なので、見ている人はまだ少ないとは思うのですが、開き直ってわりとネタバレしていくのでご注意くださいませ。なお上映会の感想はこちら。→【『響け!ユーフォニアム』番外編上映ナイト! - 沼の見える街

ーーーーーーー以下ネタバレ注意ーーーーーーー

  • さて「かけだすモナカ」、最初に言っちゃいますが…素晴らしかったです!! 正直「まぁオマケ的なアレだしな…」と舐めていたところも若干ないではなかったんですけど、いや〜、そこはさすが『響け!ユーフォニアム』の制作スタッフですね…。手を抜くことなどあろうはずもなく、堂々たる「ユーフォ14話」と呼ぶにふさわしい作品が出来上がっていました。
  • 内容はタイトルと事前の告知からある程度予測はついていましたが、やはり「チームモナカ」の活躍を描いたお話でしたね。「チームモナカ」というのは、全国大会のオーディションで落選してしまった子達によって結成された、10人くらいのグループのことです。本編ではコンクールに出場する子達にお守りを渡したりしていました。「かけだすモナカ」は、本編終盤(オーディション以降〜コンクール直前)の裏側で、チームモナカがどんな風に過ごしていたのかが丁寧に描かれたスピンオフ作品です。
  • しかし私、「かけだすモナカ」のタイトルを見て、てっきり「モナカちゃんという名前の子がいる」ものだと勘違いしてました。ていうか、最終話にみんなの前で「私たちチームモナカが…!」ってスピーチをしていた、ちょっと体が大きめの子が「モナカちゃん」なんだと思ってました。だから今回は(本編では全然スポットライトの当たらなかった)あの子が主人公なんだろうな〜、どんな話なのかな〜とか勝手に妄想をふくらませてたんですけど、見事に全然違いましたね。2年生の頭文字をとって「も・な・か」→「モナカ」なのであって、個人名ではありませんでした。ちなみに「な」は夏紀先輩の「な」!(←中川の「な」だろ)
  • では今回の主役は誰だったかというと…これがまさかの葉月ちゃんでした! 葉月ファンは何としてでも見よう! 『ユーフォ』は秀逸な群像劇ではありますが、本編ではわりと一貫して久美子の視点から物語が進行していました。でも今回は「チームモナカ」の一員としてがんばる葉月ちゃんを中心に、別の視点から見た『ユーフォ』世界が描かれるのです。葉月の部屋も見られるよ!寝起きで前髪を下ろしてる葉月も見られる!かわいい!(この子だれ?感は多少あったけど。)
  • それと全体的に本編よりも色合いが明るかったですね。単純に楽しいだけの話ではないにもかかわらず、とてもキラキラした世界が描かれていた気がするんですけど、「真夏だから」というだけではなく「葉月ちゃんだから」というのも大きいのかな〜と思いました。同じような話を描いても久美子の視点ではこんなにキラキラしないでしょう(失礼)。
  • アニメスタイル」という雑誌でも特集されていましたが、『ユーフォ』は「カメラ」の使い方が非常に独特なんですよね。まるで実写のように、むしろ実写以上に「キャラクター」と「カメラ」の関係性が強く意識されていて、ボヤケやブレや揺らぎといったカメラの作用(のアニメ的な強調)によって感情の動きを表現している。詳しく調べたわけではありませんが、「かけだすモナカ」では(久美子の視点とは違う)葉月ならではの「世界の見え方」が明らかに反映されていたと思います。これから見る人はその辺もぜひチェックを。
  • 物語的にもこの「かけだすモナカ」、一見すると単なるスピンオフなのですが、すごく「ユーフォ的」と言えるテーマを扱っていたと思います。「オーディションに落ちた子たち」という、一般的な作品では無視されてもおかしくないようなキャラたちが、(時間の制約の中でできる限り)ひとりひとり個性豊かに描かれていくという意味で、とても『ユーフォ』らしい短編でした。
  • 一見ありきたりで、ステレオタイプな役割しか与えられていないようなキャラクターであっても、それぞれが切実な「物語」を抱えている。そこの部分を決しておろそかにしないからこそ、『響け!ユーフォニアム』は群像劇として傑作たり得ているわけですよね。その最良の例が吉川優子というキャラの描き方だと個人的には思っており、吉川のことを考えるだけで私は泣けます(知らねーよ)。そうした『ユーフォ』のエッセンスは、「かけだすモナカ」の中でいっそう純化されていたと感じました。
  • さて、このチームモナカですが、(ひどい言い方をすれば)まさしく「負け組」なわけですよね。一所懸命練習したのにコンクールに出られなくて「可哀想」とも言えるんだけど、それでもその「負け」で彼女たちの「物語」が終わるわけではない。そのことは「かけだすモナカ」の冒頭で、滝先生の言葉によってはっきりと明示されていました。『ユーフォ』はシビアな作品ですが、とても優しい視点を一貫して感じられる話でもあり、この短編からはそうした視点を改めて読み取ることができます。
  • そして今回の主役である葉月ちゃんは、二重の意味で「敗者」なわけですよね。部活ではオーディションに落ち、恋愛では秀一にふられ…。でも、だからこそ今回の主役に抜擢されたのだと思います。葉月は負けてばかりたけど、それでも腐ることなく、「立ち止まってる暇なんてないよね」とばかりに走り出す。その爽やかな姿が「かけだすモナカ」で、さらに丁寧に描かれていました。伏線をうまく生かしたカタルシスにも満ちていて(詳しくは書きませんが)本編を観た人ならば「なるほどー!」と思うことでしょう。クライマックスの疾走シーンの晴れやかさよ…!
  • さらにもう一人の「敗者」である夏紀先輩も本当に素晴らしくて…という話を夜を明かしてしたいんですけど…。夏紀先輩を語るナイトしたいんですけどね…。すいません、長いのと疲れたので、いったん終わりにします…。ああ…語り!足りない!!…本当、すべての『ユーフォ』ファンが瞠目すべき美しい逸品ですので…何とかして見よう!とだけ言っておきます。映画も春にやるので見よう!ではまた…。