沼の見える街

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』感想

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  • スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』を観ました。京成ローザ、1400円。決定的なネタバレは避けるつもりですが、何も知らずに観るのが一番いいと思いますので、近々鑑賞の予定がある方はお引き返しくださいませ…。
  • 結論から言って、実に面白かったです。私は『スター・ウォーズ』シリーズに関しては完膚なきまでの「ニワカ」であり、エピソード6を観たのも一昨日(!)なんですが、それでも一本のエンタメ作品として大変楽しめました。ましてや『スター・ウォーズ』に思い入れのある人々の感動たるや!という話ですよ。まぁそういう人はこんなブログなど読むまでもなく観に行くでしょうけど…。
  • これから『フォースの覚醒』を観ようか迷っていて、「気になってはいるけど、予習が面倒くさそうだなあ」と思って二の足を踏んでいる方もいると思います。ただ、本作に限って言えば「エピソード4・5・6」、つまり「旧三部作」を観ておけば十分ですし、さらに極端なことを言えば、それさえも要らない気もします。普通に「7」単品で楽しめる作品ですし、変なネタバレを喰らう前に7を見ちゃって、その後ゆっくり復習すればいいのでは。(その場合、全く知らない人たちがめっちゃ重要な雰囲気でバーン!と登場して、周りがスゴイ盛り上がってる…みたいな状況になるので、少し戸惑うかもしれませんが…。それもまた楽しいかと。)それでは、ニワカなりの感想を適当に書いていこうと思います。

ーーーーー以下ネタバレ注意ーーーーー

  • まずは何と言っても、「A long time ago in a galaxy far, far away…」というおなじみの文言が出て、劇場が静まりかえり「くるぞくるぞ…」と待ち構えていると、『STAR WARS』のタイトルがバーーーン!!と出た瞬間の高揚感ですよね。ニワカの私でさえガン上がりしてしまうのですから、本作を長年待ち続けたファンは、この瞬間「昇天」してしまうのではないかと心配になりました。マジで何人か死んだのでは?
  • しかしその後、これまたおなじみの画面奥に向かって進むプロローグのド頭に、衝撃の一文が登場します。「ルーク・スカイウォーカーが消えた」。タイトルロゴがドーン!の感慨にしびれている間もなく、突然「主人公の消失」を告げられ、しょっぱなから物語に引きずり込まれます。「6」ではあんなにハッピーエンドっぽい感じだったのに、またぞろ悪い奴らがのさばり出して、ジェダイはみんな死ぬか消えるかしてしまい、宇宙が大変なことになっているようです(雑な認識ですいません…ニワカなもので)。
  • そんなわけで今回の「エピソード7」はこの「ルークの消失」という謎を本筋として物語が進みます。レイ(デイジー・リドリー)という女性と、フィン(ジョン・ボイエガ)という元・ストームトルーパーの男性が主人公であり、この二人の出会いと冒険が主軸です。ルークの行方を示すヒントが隠されたドロイドBB-8(可愛い)の登場によって、レイとフィンの二人は巨大な運命に巻き込まれていくのです。
  • もう観た人の誰もが気づくことでしょうが、本作は「エピソード4」をものすごく意識して作られています。おおまかな物語の枠組みが似ているだけでなく、細部に至るまで「4」に対するリスペクトが詰め込まれているんですね。BB-8の役割、船内のゲーム、フォースの効力、爆弾…いちいち挙げていくことは面倒なのでしませんが(ニワカですから…)、旧三部作を見た人なら「おっ!」と感じること間違いなしのシーンばかりでしょう。
  • また、そうした「細部へのリスペクト」だけでなく、「映画としての在り方」という意味でも、旧三部作(特に4)が大きく顧みられていると思います。作り手が「なぜ我々はスター・ウォーズという作品が好きなのか?」という問いを徹底的に考察した結果、「それは…エンタメだからだ!」という身も蓋もない結論に行き着いたのではないでしょうか。徹底した娯楽性が追求されていた旧三部作に、もう一度しっかりと立ち戻ろうとしたのは確実でしょう。全体的に話運びのテンポがとても良くて、新三部作(エピソード1~3)のモタッとした鈍重さは見る影もありません。この点だけでも賞賛に値する作品だと思います。
  • 特にワクワクしたのは、前半から中盤にかけてのくだりですね。(予告編でも見られましたが)墜落した巨大な戦艦「スター・デストロイヤー」を背景にして、スピーダーに乗ったレイが砂漠をギューーーンと疾走するショット。ここのスケール感が、やはりとても良かったです。
  • スター・デストロイヤーはエピソード4の超有名な冒頭に登場し、その「大きさ」が当時の観客の度肝を抜きました。その驚きの理由は、スター・デストロイヤーの「大きさ」の表現によって、観客に「宇宙の大きさ=世界の大きさ」が一発で伝わってきたからですよね。本作ではスター・デストロイヤーは地上に墜落しているわけですが、今回は逆に主人公の「小ささ」と比較することで、機体の大きさがいっそう際立つ作りになっている。一発のロングショットで「宇宙(世界)の大きさ」が間接的に、しかし見事に「映画的」な形で表現されていました。「4」に対する現代的なリスペクト表現として、とても正しいやり方だと思う。
  • その後、フィンと英雄ポー・ダメロンが協力して敵の基地から脱走するくだりや、レイとフィンが合流して敵の襲撃を受ける流れも綺麗でしたが、それ以上に「ミレニアム・ファルコン」に乗り込んでからのバトルに心が躍りましたね。先ほどバーーンと示した「世界の大きさ」を堪能するかのように、スター・デストロイヤーを一種の「戦場」としてうまく用いていました。キャノンをうまく操れなかったフィンが、初めて敵機の撃破を決めるシーンも最高にアガります(劇場によっては拍手が上がったのでは)。
  • その後の二人の掛け合いもリズミカルで楽しい。こうした「軽妙さ」はエピソード1~3に最も欠けていた要素だと思うので、初心に立ち返ったような会話シーンはとても嬉しかったです。
  • ハン・ソロ登場のタイミングもすごく良かった。予告編を何回も見て、登場すること自体はもちろん知っていたわけですが、それでもびっくりしました。「懐かしのハン・ソロとチューバッカに会えて嬉しい」というのもありますが(ニワカだから懐かしいも何もないけど)それだけではなく、登場に至るまでの過程がすごくテクニカルだったと思う。
  • まず「宇宙船内の毒ガスを止めなきゃ!」という件と、「フィンは実はレジスタンスではないのだが…!」という件の2つのサスペンスが、ユーモラスな会話とともに同時進行する。そうこうしてたらミレニアム・ファルコンごと何者かに囚われてしまい、まずい、敵が迫ってくる、なんとかしないと、そうださっきの毒ガスで撃退するんだ、急げ!という次のサスペンスが生まれる。これがうまいミスリードになっていて、「迫ってくる敵」が実はハン・ソロとチューバッカだった、という事実に気付きにくいようになってるんですよね。
  • 本作の最大の美点を一つあげるなら、「情報の出し方」だと思います。本編だけでなく、予告編とかも全部ひっくるめて、初見の観客が感動の最大値を得られるように上手く調整されている。(この辺、終盤の「衝撃の展開」にも上手く生かされてる気がしますね。詳しくは絶対に書けませんが…)
  • さらにそこから始まる、ハン・ソロvsヤクザvs怪獣vsフィン&レイの4つ巴(?)のバトルも「エピソード6」を彷彿とさせる陽気なバカっぽさに満ちていて楽しかったし、その後の(明らかにエピソード4のオマージュである)巨大酒場のシーンも心が弾みました。そこで巻き起こるバトルに駆けつけた「ある人物」とハン・ソロの再会など、往年のファンは感涙ものでしょう。かように見所も多くて、とにかく前半から中盤にかけては、一本の映画として文句なしに面白かったです。SWファンがどうとか関係なく、明らかに劇場で見る価値がある映画だと思います。
  • ただ正直、中盤から後半にかけては、やや物語が失速していくのも事実なんですよね…。エピソード4(を筆頭とした旧三部作)の構造に敬意を払っているのはもちろんよくわかるのですが、後半は「そのまんまじゃねーか!」という点が徐々に目立っていくといいますか…。囚われたヒロインを助けに、敵の基地に忍び込んで、いろいろあって、最後は…っていう王道すぎるほど王道な展開なわけですが、やはり現代の観客の目から見ると、「王道」というよりは「ベタ」の方に傾いてしまうかな~、と。もちろんその点は作り手も完璧に自覚していて、だからこそクライマックスに例の「衝撃の展開」を持ってきたのだと思うのですが…。
  • また主人公のレイは、デイジー・リドリーさんの凜とした佇まいもあって実に魅力的なのですが、やはり時間の制約もあってか、もうひとつ掘り下げきれてなかったかな~という感じ。特にハン・ソロとの間に擬似親子的な関係性を見出すのはちょっと無理があるよな〜…。ここがしっかりと描けていれば、あの終盤の…いや、やめておこう…。おそらく次回以降に、より深い内面が描かれることでしょう。期待してます。
  • それと今回の敵ボスであるカイロ・レンのキャラ造形は、賛否が分かれるポイントでしょうね。正直、初見では「なんか随分しょぼいやつだな…」と思っちゃったことは否めません。途中で部下に作戦失敗の報告を受けてブチ切れてしまい、メカ類をライトセーバーで叩き壊すシーンは、「怖い」というよりも「反抗期の中学生みたいだな…」と思ってしまった。ブチ切れちゃった彼に対するストームトルーパーの反応も「ああ、また始まったよ…」みたいな感じで、ちょっとギャグっぽかったし。「強い敵」みたいな雰囲気はあんまりなかったですね。
  • でも多分、作り手もその辺は自覚してると思います。『アベンジャーズ』のロキもですが、こういう「弱いからこそ真にタチが悪い」みたいな「弱い悪」の描写って現代(いま)っぽいですし…。次回以降、どのように「悪」として成長していくのか(orいかないのか)、刮目して見守っていきたいと思います。でもしばらくは「ヘタレ」ネタでファンにいじられる気がしますね、レンさん…。それはそれで美味しいけど。
  • ああ、また長くなってしまった…。そろそろやめときます。ちょっと文句めいたことも書いてしまいましたが、あくまで先週くらいまでスター・ウォーズの「ス」の字も知らなかったようなニワカの戯言ですからね。思い入れのある人なら絶対に感動するでしょうし、「SWとか別に~」という人間だった私でさえ十分すぎるほど楽しめる、極めて間口の広いエンタメ作品でした。『フォースの覚醒』、この『スター・ウォーズ』という壮大な作品世界への入り口としてはピッタリですし、今年「最も重要な映画」の一本であるのは間違いないと思います。ニワカの皆様も、この巨大すぎる祭りに加わってみてはいかがでしょうか。ではこの辺で…。