沼の見える街

ぬまがさワタリのブログです。すてきな生きもの&映画とかカルチャー。

『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』感想

  • 映画『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』を見たので箇条書きで感想を書こうと思います。TOHOシネマズ錦糸町、1100円。しかしこのタイトルだとまるで「新しいのび太が日本に誕生した」みたいですね…。どうでもいいですが「novita(ノヴィタ)」はイタリア語で「新しさ」という意味です。
  • 超どうでもいい話はともかく、私はドラえもんの映画は実はちょいちょい見ていまして、最近だと『ひみつ道具ミュージアム』だとか『新・大魔境』なども映画館で見ました(『スペースヒーローズ』はあんまり評判が良くなかったのでスルーしました)。どっちも(言いたいこともないではないにしろ)なかなか面白かったんですが、そうした基準から言っても今回の『新・日本誕生』はかなり良い出来だと感じましたね。リメイク(語り直し)として秀逸だったと思います。
  • しかし『日本誕生』って大長編の中でもわりと地味というか、渋い話なんですよね。宇宙や魔界やジャングルに行くわけでもなし、恐竜やお化けが出るわけでもなし…。毎度お馴染みドラえもんのび太一行が、家庭でのひどい扱いに不満を感じて家出をはかるんですが(名セリフ「俺は母ちゃんの奴隷じゃないっつーの!」も登場)、向かった先は「7万年前の日本」というなかなか渋いチョイス。果てしなく広がる緑の大地を前に、「ここを僕たちのパラダイスにしよう!」と改造計画をスタートします。楽しそうでいいですね。本作で「悪」とされている時間犯罪の香りがしなくもないですが…。
  • 余談ながら、原作ではワニと遭遇していたはずの場面が、なぜかオオサンショウウオに差し代わってましたね。「いくら昔といってもさすがに日本にワニはいないだろワニは…」ということで変更になったのかもしれませんが、オオサンショウウオってあんなアグレッシブなノリで人を襲うのだろうか…。まぁ7万年かけて大人しくなったのかもしれないですしね。
  • ゲストキャラの原始人少年・ククルも生き生きしていてめっちゃ可愛かったですね…。アニメのドラえもんの絵柄は世代が変わってたいへん可愛らしくなったわけですが、のび太スネ夫ジャイアンといったキャラは可愛くするにも限度がありますからね…。『ひみつ道具博物館』の時も思いましたが、いじりにくいメインキャラで溜まった鬱憤(?)を晴らすかのように、とにかくゲストキャラは全力で可愛く描かれている気がします。
  • 名前だけはものすごく有名な本作のラスボス・ギガゾンビも、今回のリメイクではとてもカッコよく描かれていました。原作だと色んな意味でしょぼいんですけどね。ドラえもんとの一騎打ちのシーンもグルッグル動く作画でカッコよかったです。
  • ちょいちょい挟まる変更点で「上手いな」と思ったのは、雪山のシーンとギガゾンビの倒し方でしょうか。雪山でのび太が遭難するくだりは、ご都合主義的にタイムパトロールの助けが入る原作よりも、今回のリメイクの方がずっと理にかなっていると思いました。雪の中でのび太が見た幻覚の「心をえぐる」具合もさらにパワーアップしていてたいへん恐ろしく、だからこそ、その後の顛末には不覚にもグッときてしまいました。「笛」にまつわる丁寧な伏線も見事の一言で、ここは確実に藤子先生の原作をも凌駕している部分でしょう。
  • また、ギガゾンビに対してコレは通用しないけどアレなら…!というクライマックスの展開も原作にはない部分ですが、きっちり筋が通っていてたいへん好ましかった。映画のテーマとも合致していますし、何より人間の後進性や原始性をあざ笑ってたギガゾンビが「アレ」にやられるというのが実に痛快です。
  • その直後にドラがセリフでメッセージを言っちゃったのは少し余分かなとは感じたものの、「最後は論理で勝つ」というのは大長編ドラえもんの重要なポイントだと思うので、そこを抑えてくれたのはとても良かったですね。『大魔境』では「なんだかんだ気合いと友情パワーで勝ちました」的な改変が不満だったこともあり、今回は大いに満足しました。『ちはやふる』もそうですが、勝敗のロジックがしっかりしているって本当に大事だなと思います。
  • ラストの泣かせ展開だけはやや蛇足に感じないでもなかったですが、まぁこれくらいなら全然アリです。「のび太、7万年の世界でペガサスだのドラゴンだの作って放し飼いにしてるって普通に逮捕もんなのでは」とか野暮なことを思う一方で、実際けっこうウルっときちゃいましたし…。…ていうかこのシーン、思いっきり「TPぼん」の人たちがいましたね…。芸が細かい。
  • そんな感じで『新・日本誕生』、ドラ愛(藤子F愛?)にあふれている、これまででも群を抜いて良質なリメイクだったと思います。このブログを見ている人で「ドラえもん映画はマストでしょ」みたいに思ってる人もあんまりいない気はするんですが、普通に楽しい、優しい気持ちになれる優れたアニメ映画ですし、子ども向けと侮らずに見に行ってみてはいかがでしょう。雑ですがこの辺で。