沼の見える街

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『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』感想

  • 先日見た劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』の感想です。今回あんまりネタバレは気にしませんのでご注意を…。
  • いきなり脱線しますけど、劇場特典のオマケとして「守護神官マハード」というカードをもらったんですが、私が知る時代の「遊戯王」の基準からすると、コレめちゃくちゃ強くないですか…? 特殊効果も強いけど、こんな攻撃力の高いカードを手札に引いた瞬間すぐに召喚できるってスゴイですね。まあ遊んでたのはだいぶ前なので、色々とルールが変わっているんでしょう。時の流れを感じますね…。
  • そんな「時の流れ」が本作の重要なテーマです(無理矢理すぎる導入)。原作漫画の結末で遊戯たちがアテム(いわゆる闇遊戯)と別れた後にも、時間は確実に流れていました。卒業を控えた遊戯や城之内や杏、そしてみんな大好き海馬社長が一体どのような未来に向かっていくのか…。そうした物語が描かれた、まさに「遊戯王」という作品の完結編となっているのです。
  • というわけで基本的にはシリアスな話なんですが、「遊戯王」らしいバカバカしさ一歩手前のハッタリもふんだんに効かされていて楽しいです。いきなり冒頭から何の説明もなく宇宙空間にいる海馬社長が、観客のハートをガッシリ掴んでくれます。宇宙エレベーターまで自前で作っちゃう海馬コーポレーション、どんだけ儲かってるんだよって話ですが…。
  • 冒頭からもわかるように、海馬は今回の映画の主役とも言っていいキャラクターです。今でこそ「遊戯王」といえば海馬社長!ワハハハハ!みたいなイメージが定着していますが、原作漫画だとバトルシティ編の準決勝で遊戯に敗北して、それ以降は(エジプト編でセトという海馬っぽいキャラは登場するものの)海馬本人はほとんど出てこないんですよね。
  • さらに原作だとアテム(闇遊戯)は最大のライバルである海馬に何の挨拶もなく、勝手に遊戯と決着をつけて冥界に旅立っちゃうわけで、なんだかんだでアテムが好きで好きで仕方ない海馬にしてみれば「ふざけんなよお前」という気分だったことでしょう。
  • 遊戯王」原作はラストが非常に美しく締められているんですが、終盤は高橋先生の健康状態が悪かったこともあり、かなり「巻き」の展開だったようなので、海馬のエピソードを入れる余裕はなかったのでしょう。それにしたって海馬視点では不完全燃焼な終わり方だったことは間違いなく、今回の映画版はそんな海馬に対する10年越しの壮大な「フォロー」だと言っていいと思います。さすが社長、特別待遇ですね…。
  • 前半、海馬社長とアテムが教会のような場所でド迫力のバトルを繰り広げるシーンは、もう「海馬社長フルスロットル!」という感じです。終始ハイテンションで「ドルゥゥオオオオオ!!!」「ブゥルウウウアアアーーーイズ!!!」などといったおなじみの単語をスタイリッシュに絶叫してバトルを盛り上げてくれます。バトル自体も派手な技と魔法の応酬でなかなかスリリングで面白かったんですが、それが終わった後の海馬のリアクションがすごく味わい深い。というのも、この対戦相手のアテムというのが実は本人ではなく(アテムは冥界に帰ったので当たり前ですが)、ハイパー科学技術を用いて海馬の記憶を元に作り出したアテムの幻影だったんですね。
  • 海馬コーポレーションどんだけだよトニー・スタークかよって感じですが、海馬本人はこの技術にも全く満足しておらず、「こんな偽者の遊戯と戦って何の意味がある!!」と部下に怒鳴りちらします。「イヤその技術はそういうシステムなんだから科学者に怒っても仕方ないだろ!そしてあんたさっきまでめちゃくちゃノリノリだったじゃねーか!!」というような野暮なツッコミも浮かびますが、海馬の遊戯に対する複雑な執心(a.k.a.愛情)、そしてあの海馬でさえもどうしようもないことがこの世にはあるという悲哀が伝わってきて、ホロリとするシーンでもあります。
  • 新キャラの藍上くんと海馬社長のバトルも楽しかったですね、ルールはよくわかんなかったけど…。「次元召喚」という新ルールが導入されるのですが、モンスターの攻撃力などのステータスが持ち主の気合いで変動するという、カードバトルの根本を揺るがすシステムなんですよね…。カードのポテンシャルを引き出せるか否か、みたいな面白さを生みたかったんでしょうが、海馬も遊戯も「ウオォォォ」とか「ハアァァァ」とか言いながら普通にマックスまで数値を引き出していたので、別にいらなかったんじゃね?この設定…とちょっと思いました…。
  • とはいえそんな野暮なツッコミなど吹き飛ばすほど、藍上vs海馬のバトルのクライマックスは最高に盛り上がります。海馬社長の代名詞ともいえるブルーアイズホワイトドラゴン(の亜種)がガンガン登場してガンガン破れ去っていく流れもダイナミックですが、大ピンチに瀕した海馬がもうひとつの代名詞である「アレ」をムリヤリ引き当てるシーンは凄かった。(一応の理屈はあるとはいえ)もはやカードゲームでもなんでもない逆転方法なんですが、直後の「モンスターではない…神だ!!!」という台詞の突き抜けたバカ格好よさに、爆笑しつつも押し切られてしまいます。やはり遊戯王は海馬あってこそというか、「もうお前が最強でいいよ」という気持ちになりますね…。
  • 登場するごとに絶大なインパクトを残してくれるのでつい海馬社長のことばかり語ってしまいますが、中盤にゲストキャラとの悶着を通じてバクラの過去が明らかになったりと、海馬以外の見どころも(当然ですが)あります。ただまぁ藍上の世界がどうとか人類がどうとかのメッセージは特に目新しいものではなく、ぶっちゃけ彼が活躍するパートはそんなに面白くなかったんですが、劇場版らしいスケール感が出ていて良かったんじゃないでしょうか。終始海馬社長ばっかり映してるわけにもいかないですからね…。
  • 主人公の遊戯をはじめとしたおなじみのメンバーもきっちりと成長した様子を見せてくれるので、古参の原作ファンは嬉しいことでしょう。城之内も相変わらず心配になるくらいデュエルデュエル言ってて、実に城之内で良かったですね…。欲を言えば城之内にも一回くらいデュエルさせてあげてほしかった(100%咬ませ犬で終わっていたでしょうが…)。
  • 後半は海馬、遊戯、藍上の三者によるデュエルへとなだれ込んでいきます。カードゲーム的な戦略性というよりは、もうド派手な技と魔法の応酬に特化したバトルという感じでしたが、逆に言えばルールをよく知らない人でも楽しめるようになっていました。「キンプリ」でいうカヅキvs大和アレクサンダーみたいなノリで見たら良いのではないでしょうか(ちょうど「遊戯王」も応援上映が始まったみたいだし…)。
  • 特に2戦目、海馬vs表遊戯のバトルはグッときましたね。海馬が大好きなのは…もとい戦いたいのはあくまで闇遊戯=アテムであり、アテムの入れ物にすぎない表遊戯には今まで何の関心も抱いていませんでした。そんな海馬が、デュエルを通じて初めて遊戯をライバルとして認めていく…。この流れは非常にグッときましたし、原作ファンには感涙モノなのではないでしょうか。
  • そして色々あって藍上がスゴイことになってしまうんですが(雑)、そんな彼と遊戯&海馬がタッグを組んで戦うラストバトルもかなり熱かったです。最後の最後、もうダメか…という瞬間に、黄金のオーラをまとってついに姿を見せる「アイツ」! 詳しくは語りませんが(バレバレだろ)まさに「待ってました!」というタイミングでの登場で、どうしたって燃えずにはいられません。応援上映がめちゃくちゃ盛り上がりそうだな…と思いました。 私も叫んでみたいです…そう、奴の名を…!
  • よくわからないテンションになってきたので、この辺で終わりにしておきます。「遊戯王」になんの思い入れもない人にはさすがにオススメしませんが、昔ちょっと触れたことがあるな〜、懐かしい、くらいのテンションでも十分に楽しめる作品だと思いますし、ハイクオリティなアニメ映画なのは間違いないと思いますので、気になってる人はぜひ海馬社長の勇姿を確かめに行ってみてはいかがでしょう。最後の最後に社長が行き着く先を見届ければ、「本当によかったね、末長くお幸せに…!」という気持ちが湧いてくるはずです…。では。